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匠投資顧問株式会社に対する行政処分について

令和8年5月29日

関東財務局

  1. 匠投資顧問株式会社(東京都千代田区、法人番号2010001092059)(以下「当社」という。)に対する検査の結果、以下の問題が認められたことから、証券取引等監視委員会より行政処分を求める勧告が行われた(令和8年5月15日付)。

    1. 投資一任契約を締結した顧客のため忠実に投資運用業を行っていない状況等
      1. 投資先医療法人から資金が流出している状況で投資一任契約に基づく投資を継続していた状況等
         当社は、顧客との間で投資一任契約を締結し、主として甲社が発行する社債(以下「甲社債」という。)へ投資を行い、甲社は社債発行により調達した資金について、乙医療法人に投資を行っていた。
         当該投資一任契約は、投資運用業を行う当社の矢野 英明代表取締役社長(以下「矢野代表」という。)が投資先である甲社の代表取締役を兼ねる関係となっているほか、乙医療法人は、令和3年9月16日まで当社の株式を99%以上保有するとともに、平成25年9月30日から令和3年9月20日まで当社のChief Investment Officer(以下「CIO」という。)として運用部門を総括していたXが資金管理を行う関係となっており、当社においては投資者よりも投資先の利益を優先させる弊害を生じさせないための厳格な利益相反管理が必要な状況であった。
         このような状況の中、平成29年6月から令和6年1月の間に当社が顧客との間で締結した投資一任契約について、以下の問題が認められた。

        ① 役職員が最終投資先の一つである医療法人の資金を流出させている状況で投資一任契約に基づく投資を継続していた状況
         当社は、平成29年6月から令和3年4月までに、延べ17名の顧客と総額2億4000万円の投資一任契約を締結し、うち2億1000万円について、甲社債への投資を行っていた。
         甲社は、社債発行により調達した資金2億1000万円について、乙医療法人の事業に投資を行っていた。
         このような中、Xは、平成29年6月から令和3年4月までに甲社債の取得を通じて乙医療法人へ複数回にわたり送金された資金のうち2億500万円について、送金された都度、乙医療法人から私的に流出させた。
         当社は、投資一任契約における最終投資先の一つである乙医療法人において、当社CIOであったXが投資資金を私的に流出させている状況の中、投資資金を乙医療法人に投資する運用を継続していた。

        ② 顧客の投資資金の運用が行われていない状況
         矢野代表は、令和3年6月20日過ぎにXから乙医療法人とは別の法人の内部資金20億円を不正に流出させていたことを打ち明けられたことなどを契機に、乙医療法人の預金通帳を確認して、乙医療法人から資金が流出していること、甲社が乙医療法人から資金を回収できないことにより、投資一任契約を締結した顧客(以下「既存顧客」という。)に対する甲社債の償還金(以下「社債償還金」という。)の支払いに懸念が生じていることを、令和3年9月30日までに認識した。
         上記懸念が生じていることを認識した矢野代表は、既存顧客に対する社債償還金の支払いを可能とするため、以前から矢野代表に医療法人の買収に係る相談を行っていた事業会社(以下「丙社」という。)との間で、丙社が乙医療法人の実質支配権及び甲社株式の取得を対価として、社債償還金の支払いに必要となる金額を丙社が甲社に入金すること等を内容とする口頭契約に合意した。
         既存顧客に対する社債償還金の支払いについては、丙社との上記の口頭契約に基づき、丙社から甲社に入金される資金を充てる予定でいたものの、当該入金は分割で行うこととしていたため、社債償還金の支払日において必要額が不足する場合があった。
         このような状況の中、当社は、当時、当社へ投資の相談をしていた顧客A、顧客B、顧客C及び顧客D(以下、4名を合わせて「4顧客」という。)のうち、顧客A、顧客B及び顧客Cに対して、甲社債の取得を通じ、乙医療法人の事業に投資を行うことにより投資資金各1000万円の運用を行う旨説明したほか、顧客Dに対して、甲社債の取得を通じ、医療・介護事業を行う事業者への投資を行うことにより投資資金5000万円の運用を行う旨説明し、令和4年5月から同6年1月までに、4顧客との間で上記の運用を内容とする投資一任契約を締結した。
         一方で、当社は、4顧客とそれぞれの投資一任契約の締結をする前までに、甲社の代表取締役でもある矢野代表が4顧客の投資資金を既存顧客及び当社が私募の取扱いを行った甲社を営業者とする匿名組合契約に基づく匿名組合員(以下「既存顧客等」という。)への償還金の支払い原資とする旨を当社の取締役会で報告した上で、令和4年5月から同6年2月までの間において、4顧客の投資資金計8000万円を、甲社債の取得に充てることなく、償還金の支払日を迎えた既存顧客等延べ24名に対する償還金の支払いの原資として使用した。このため、甲社が乙医療法人や医療・介護事業を行う者へ投資した実態もなかった。
         上記のとおり、当社においては、4顧客の投資資金について、投資一任契約に基づく運用が行われていない状況が認められた。

        ③ 事実と異なる内容の運用報告
         当社は、顧客A、顧客B及び顧客Cに対し、令和5年7月から同6年3月までに交付した投資一任契約の運用状況に係る情報を記載した書面(以下「運用報告書」という。)において、甲社債の取得を通じて、乙医療法人の事業に投資をすることで安定した運用を行っている旨を報告しているものの、実際は上記②のとおり、顧客へ説明した投資資金の運用が行われておらず、事実と異なる内容の報告を行っていた。

      2. 投資一任業に関して顧客から金銭の預託を受ける行為
         投資運用業者は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)上、その行う投資一任業に関して顧客から金銭の預託を受けてはならないが、当社は、令和4年11月から同5年2月までに顧客B及び顧客Cに投資一任契約に係る投資資金の一部を当社名義の銀行口座に入金させ、令和4年11月から同5年3月まで、顧客B及び顧客Cの投資資金の一部について、当社名義の銀行口座で預託を受けていた。
         
      3. 運用報告書の未交付
         投資運用業者は、金商法上、半年に1回以上、運用報告書を権利者に交付する必要があるが、当社は、顧客A、顧客B及び顧客Cに対し、運用報告書を交付していたものの、投資一任契約の締結日から1年以上を経過して交付していたほか、顧客Dに対しては、当該契約締結日から1年以上を経過しても運用報告書を交付していない。
         
      4. 役職員の法令違反行為の当局への未届出
         矢野代表は、上記アのとおり、Xが資金管理を行っていた乙医療法人の資金を私的に流出させていたことを遅くとも令和5年1月に把握しており、Xによる法令等に反する行為を認識していた。
         Xの行為は、当社が顧客との投資一任契約において投資先としている医療法人で発生した法令等に反する行為であるが、当社の投資運用業務の運営に重大な影響を及ぼすおそれがあるものと認められることから、金商法上、役職員による法令等に反する行為として当局に届出を行う必要がある。しかしながら、矢野代表は自ら役職員の法令等に反する行為を認識したにもかかわらず、当局への届出を行っていない。

         上記アのとおり、当社において、運用責任者自らが資金管理を行う最終投資先において資金を流出させながら、当該投資先へ投資する運用を継続していた状況、4顧客と投資一任契約締結後、4顧客の投資資金を運用することなく既存顧客等に対する償還金の支払いに充当していた状況、顧客に対し事実と異なる内容の運用報告を行っていた状況が認められた。これらの状況は、当社と甲社の代表取締役が同一の者であることなど投資運用業者と資金需要者である投資先が強い利益相反関係にあることを背景に、投資先の都合を優先した行為が行われたものであり、資産運用の専門家に運用を任せることを期待して投資一任契約を締結した顧客をないがしろにし、その信認を裏切るものであることから、投資一任契約を締結した顧客に対する重大な忠実義務違反であると認められ、金商法第42条第1項に違反するものと認められる。
         上記ア③及びウの行為は、令和5年法律第79号による改正前の金商法第42条の7第1項に違反するものと認められる。
         上記イの行為は、金商法第42条の5に違反するものと認められる。
         上記エの行為は、金商法第50条第1項に違反するものと認められる。
         

    2. 投資助言業務に係る善管注意義務違反等
      1.  組成者が無登録で投資運用業を行っている金融商品について、十分な検討を行わないまま顧客に投資助言等を行っている状況
         当社は、投資顧問契約を締結した顧客に対し、英国王室属領マン島に所在するRL360 Insurance Company Limited(以下「RL社」という。)が組成した海外金融商品(Regular Savings Plan(以下「RSP」という。)等)について、投資助言を行っている。
         当社が顧客に対し交付した資料等によると、RSPは、出資者が定期的に一定額を拠出した金銭について、RL社が主に海外ファンドに投資して運用し、満期が到来した際に、当該時点における運用財産額及び特別な配当が出資者に支払われる仕組みとされており、金商法第2条第2項第6号に規定する海外集団投資スキーム持分に該当する金融商品である。また、海外集団投資スキーム持分を有する日本国内の居住者から出資を受けた金銭について、主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として運用を行う場合、金商法上の投資運用業の登録が必要となるところ、RL社は投資運用業の登録を受けていない。
         投資助言業務を行う金融商品取引業者は、顧客に投資助言を行う金融商品に関し、適法性の観点から十分に検討を行う責務があるところ、当社は、RSPが海外集団投資スキーム持分であること及び日本国内の居住者から出資を受けた金銭が運用されていることを認識している中、RL社の投資運用業の登録の必要性やRSPの取扱いの可否について法令に照らした検討がされるべきであったにもかかわらず、十分な検討がなされないまま、投資顧問契約を締結した39名の顧客に対してRSPに関する投資助言を行っていた。
         このような状況は、金融商品取引業者として、顧客に対し、善良な管理者の注意をもって投資助言業務を行っていない状況と認められる。
         
      2. 広告に関し法定記載事項の表示不備等
         当社の取締役を務めるY取締役は、将来的に当社との投資顧問契約の締結などの取引を行う顧客の獲得を目的として、令和4年に「お金のお悩み相談窓口」と称するウェブサイト(以下「窓口サイト」という。)を開設し、運営している。
         窓口サイトには、投資助言サービスとして当社の行う投資助言業務の内容が掲載されており、また、Y取締役は窓口サイトから問合せのあった顧客に対して当社の投資顧問契約を勧誘していることから、窓口サイトは当社の広告であると認められる。
         そのような中、窓口サイトにおいて、当社の商号、金融商品取引業者である旨及び登録番号等の法令で求められている事項の表示がされていないほか、「お客様の声」として取引の実績、顧客の評価等を記載したページにおいて、架空の顧客に関する記載をしており、著しく事実に相違する表示を行っている。

         上記アの状況は、金商法第41条第2項に規定する「善良な管理者の注意義務」に違反するものと認められる。
         上記イの行為は、金商法第37条第1項及び第2項に違反するものと認められる。
         

  2. 以上のことから、本日、当社に対し、下記(1)については金商法第52条第1項の規定に基づき、下記(2)については同法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行った。

  1. 登録取消し
     関東財務局長(金商)第367号の登録を取り消す。
     
  2. 業務改善命令
    1) 顧客に対し、今回の行政処分の内容について、速やかに、かつ、適切に説明すること。
    2) 金融商品取引業に係る全ての業務を速やかに結了させること。
    3) 当社が顧客との契約に基づき運用している全ての運用財産(以下「当社運用財産」という。)の運用・管
    理の状況を早急に把握し、顧客の求めに応じて必要な事項の説明を行うこと。
    4) 顧客の意向を踏まえ、当社運用財産の顧客への返還に関する方針を策定し、速やかに実施すること。
    5) 顧客間の公平性に配慮しつつ、顧客保護に万全の措置を講じること。
    6) 当社運用財産及び当社財産を不当に流用しないこと。
    7) その他、運用財産及び顧客保護のために必要な対応を行うこと。
    8) 上記の実施状況を、そのすべてが完了するまでの間、随時書面で報告すること。
     

本ページに関するお問い合わせ先

関東財務局 理財部 証券監督第2課

電話:048-600-1296(直通)

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