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地域通貨発行に関する留意点

 

1.地方公共団体が発行者となる場合


 前払式支払手段発行者のうち、一定の要件を満たす者については、事前の登録もしくは事後の届出が必要となりますが、地方公共団体が発行者となる場合は、資金決済法(第2章)の適用を受けません。

 つまり、法令上の要件を満たす前払式支払手段を発行する場合であっても、発行主体が地方公共団体であれば、資金決済法上の登録や届出は不要となります。

 しかし、以下の点については注意が必要ですので、発行を検討する際には、発行者自身において事前に整理しておくことを推奨します。 

(1)地方公共団体が発行主体となっているか。 


 例えば、地方公共団体や地元企業などが出資して設立する、いわゆる「地域商社」が発行者となって第三者型前払式支払手段を発行する場合は、地方公共団体の出資比率にかかわらず、法の適用を受けることとなり、事前の登録を要します。商工会や商店街振興組合等が発行主体となる場合についても同様です。 

 なお、既存の第三者型発行者が発行主体となって地域通貨を発行するスキームも考えられますが、地方公共団体が発行者であるかのような表示等がなされている場合には、名義貸しの禁止(法第12条)に抵触する可能性もありますので、注意が必要です。 

(2)他の規制には反していないか。 


 前払式支払手段発行者としての規制は受けなくとも、例えば地域通貨の残高を自由に出金可能な仕様とするなど、為替取引に該当した場合には、資金移動業の登録が必要となる可能性が考えられます。 

 なお、資金移動業の登録主体は「株式会社又は外国資金移動業者」に限定されているため(法第40条第1項第1号)、地方公共団体や商工会等が登録を受けることはできません。

 2.地方公共団体以外が発行者となる場合


 上述のとおり、第三者型のスキームにおいて地方公共団体以外の者が発行者となる場合は、事前の登録が必要となります。登録審査については、通常の事業者同様、金融庁事務ガイドラインに準拠して実施しますが、特に地域通貨の場合に注意を要する点を以下に紹介いたします。

(1)純資産要件 


 第三者型発行者として登録を受けようとする場合には、原則として1億円以上の純資産額を有していなければならず、登録後も安定的に維持することが求められます。 

 ただし、前払式支払手段の利用可能範囲が一つの市町村(特別区も含む。地方自治法上の指定都市にあっては区又は総合区。)の区域内である場合には1,000万円、発行者が一般社団法人等であって一定の要件を満たす場合には0円など、純資産額の下限が緩和される場合もあります。 

 また、金融庁告示(平成22年3月1日金融庁告示第17号)により定められた法律(商工会法や商店街振興組合法など)に基づいて設立された、営利を目的としない法人であって、その定款に前払式支払手段の発行の業務を行う旨の記載がされているものについては、純資産に係る要件は課されません。 

 これらの緩和措置等の適用を考えている場合には、各種要件の該当性について事前によく整理しておくことを推奨します。 

(2)態勢整備 


 登録審査では、例えば利用者情報やシステム管理、苦情処理等に係る態勢の整備状況について、内部規程等を通じて確認を行います。

 特に人員配置等については、ガイドラインで求められている水準に達していない場合には、人員確保や組織編制などの対応に多くの時間を要することが予想されますので、あらかじめ発行規模や特性などを勘案したうえで、どのような態勢の構築が必要となるのか検討しておく必要があります。 

(3)委託先管理 


 発行の業務の一部を委託したとしても、最終的な責任は発行者が負うこととなります。そのため、委託先へのモニタリングや有事の際の対応等については、内部規程等において明確に定めておく必要があります。 

 また、登録審査の際は、委託業務の詳細な内容についても説明いただく必要がありますので、委託先任せとなることがないよう留意してください。 

 なお、自己の名義をもって、他者に発行の業務を行わせるといった名義貸し行為は禁止されているため、前払式支払手段の発行に係る全ての業務を委託するといったことは認められません。 

 以上、地域通貨を発行するうえでの主な留意点を紹介いたしました。 

 地域通貨には先行事例が多く存在しますが、先行事例のスキームをそのまま流用してしまうと、意図せずして法の適用を受けることとなったり、登録審査にあたって必要な態勢が整備できなかったりするといったことが考えられます。

 まずは、地方公共団体を発行主体とするのか否かといった点を整理いただき、そのうえで登録を取得する方向で進めるのであれば、それぞれの発行規模や特性などを踏まえた態勢整備をご検討いただくことを推奨します。 

 なお、地域通貨の発行を検討するにあたって資金決済法上の疑問点が生じた際には、法的整理を行ったうえで、管轄する財務事務所もしくは関東財務局金融監督第6課あてにご相談ください。 

本ページに関するお問い合わせ先

関東財務局理財部金融監督第6課 

電話:048-600-1152

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