ペッツベスト少額短期保険株式会社に対する保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分等について
関東財務局は、本日、ペッツベスト少額短期保険株式会社(本社:東京都千代田区。法人番号:5010001100297。以下、「当社」という。)に対し、保険業法第241条第1項の規定に基づき、下記のとおり保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分を行った。
また、同法第242条第2項の規定に基づき、弁護士の松永崇氏、公認会計士の泉範行氏を当社の保険管理人として選任し、併せてこれらの保険管理人に対し、同法第247条第1項の規定に基づき、当社にかかる業務及び財産の管理に関する計画の作成を命じた。
本件処分は、当社において長期間にわたり恒常的に発生している保険金支払いの遅延について、外部資金調達の不調等により自力にて解消を行うことが困難であり、今後も継続して保険金等支払遅延が発生する可能性が高いと認められるため、保険契約者等の保護の観点から実施したものである。
今般の措置により、当社の代表権、業務の執行並びに財産の管理・処分権は保険管理人に専属することとなり、本日選任した保険管理人は、当社にかかる業務及び財産の管理に関する計画を策定することとなる。
記
1.保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分の内容
保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる。なお、以下の事項に留意すること。
(1)同法第242条第1項の規定に基づき、命令日以降、当社を代表し、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は、当局の選任する保険管理人に専属する。
(2)同法第245条の規定に基づき、令和4年9月2日から全ての業務を停止すること(保険管理人の申出により、当局が必要があると認める業務を除く)。
2.処分の理由
適時・適切な保険金等の支払いは、少額短期保険業を行なっていくうえで必要不可欠な基本的かつ最も重要な機能であるなか、当社の状況は、保険業法第241条第1項に規定する「その業務の運営が著しく不適切でありその保険業の継続が保険契約者等の保護に欠ける事態を招くおそれがあると認めるとき」に該当するものと認められる。
※当社の状況は4.のとおり。
3.保険管理人の氏名及び主な経歴
松永 崇 (弁護士)
平成17年 京都大学法学部卒業
平成20年 弁護士登録(第一東京弁護士会)
同年 弁護士法人大江橋法律事務所入所
平成28年 ヴァンダービルト大学ロースクール修了(LL.M.)
平成28年 ウィンストン・アンド・ストローン法律事務所(ニューヨーク・ロンドン)勤務(平成29年8月まで)
泉 範行 (公認会計士)
平成3年 京都大学工学部卒業
平成12年 東京北斗監査法人(現 仰星監査法人)入所
平成16年 公認会計士登録
同年 泉会計事務所 開設
平成16年 税理士登録
平成22年 株式会社コンサルティング・モール代表取締役 就任
4.当社の状況
(1)保険金等支払遅延の発生について
当社は、普通保険約款(ペット医療保険(ペットネーム:獣医師がつくったペットのための医療保険)及び新ペット医療保険(ペットネーム:セレクトBEST)(以下、これらを「当該保険」という。)にかかる普通保険約款)において、保険金の請求書及び必要書類を受領した日から、その日を含めて原則15営業日以内に、必要な確認を行ったうえで、保険金等を支払う旨を定めている。
こうしたなか、当社において、当該保険に関し、保険金等支払遅延(調査が必要な請求等を除き、普通保険約款に定める期日以内に保険金等の支払が行われていないものをいう。以下同じ。)の発生が認められたことから、当局は、保険業法第272条の22第1項に基づき、令和3年12月1日付及び令和4年3月15日付並びに令和4年5月25日付で、その発生原因や解消策について報告を求めた。
これに対し、当社は、当局あてに提出した報告において、保険契約者等からの保険金請求に対する査定手続き等に対応するための人員不足及び保険収支の悪化等により保険金支払遅延が発生しているとしたうえで、人員の確保による保険金等支払管理態勢の構築、あわせて、外部からの資金調達を行うことにより保険金等支払遅延の早期解消を図るとしたが、その後においても適切に査定を進めるための十分な態勢の構築に至っていないほか、当該資金調達が不調に終わったこと等により、支払遅延を解消することなど適切な改善は為されなかった。(当該保険にかかる保険金等支払遅延は、令和4年4月末時点で3,641件(支払必要見込額:約2億円)。)
(2)令和4年6月の行政処分と当社の対応について
上記(1)の状況は、保険金等の支払管理について重大な問題があり、少額短期保険業を的確に遂行するに足りる人的構成を有しないおそれがあるほか、保険業法第272条の2第2項各号に掲げる書類に定めた事項のうち特に重要なものに違反する状況と認められたことから、当局は、令和4年6月10日、保険業法第272条の26第1項第4号に基づき新契約の募集及び締結並びに契約更新にかかる業務の停止を命ずるとともに、保険業法第272条の25第1項に基づく業務改善命令において、保険金等の支払遅延を令和4年7月24日までに解消することのできる改善策及び支払計画を策定し実行すること等を命じた。
これに対し、当社は、第三者割当増資等による外部からの資金調達により支払資金を確保し、令和4年7月24日までに保険金等支払遅延の解消を図るとした業務改善計画を策定し、令和4年6月24日付で当局に提出し、査定手続き等に対応するための人員を増員し、査定手続きを進めたものの、計画終期となる令和4年7月24日においても保険金等の支払遅延は解消されておらず、令和4年8月1日付の当社報告によれば、令和4年7月24日時点において、依然として4,080件(保険金支払必要予定額:約2億円)の保険金等支払遅延が認められるなど、業務改善命令に基づく業務改善計画が未達となっていた。
この状況は、保険業法第272条の26第1項第4号に規定する「法令に基づく内閣総理大臣の処分に違反したとき」及び「第272条の2第2項各号に掲げる書類に定めた事項のうち特に重要なものに違反したとき」に該当すると認められるため、令和4年8月10日、保険業法第272条の26第1項第4号に基づき、再度、新契約の募集及び締結並びに契約更新にかかる業務の停止を命じた。
(3)現在の当社の状況について
以上のとおり、当社においては、長期間にわたり恒常的に保険金等支払遅延が発生し、現在においても、その解消を図ることができていないものであるが、約2億円の保険金支払遅延に対し、令和4年7月末時点の現預金残高は約16百万円に止まっていること、保険金の支払原資となる外部資金の調達について具体的な予定が立っていないこと等を踏まえると、現在、発生している保険金の支払遅延について、当社が遅延の解消を行うことは困難であり、今後も継続して保険金等支払遅延が発生し、適時・適切な保険金支払いを行うことができない可能性が高いと認めざるを得ない。
また、こうした状況において、新契約の募集及び締結並びに契約更新にかかる業務を再開することは、保険契約者等の保護に反することとなるものと認められる。
なお、当社の決算については、令和3年3月期及び令和4年3月期の2期にわたり、計算書類等に対する意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったことを理由に、会計監査人から「意見不表明」の監査報告書が提出されており、令和4年6月16日に当社から提出された令和4年3月期決算の監査報告書においては、意見不表明の根拠として、貸借対照表に計上されている資産の回収可能性について、「通常実施すべき監査手続の実施によって十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった」とされているほか、継続企業の前提について、「中期経営計画等の利益計画や、追加の資金調達に関する具体的で実現可能な計画等の提示がなかったため、継続企業の前提についても確認することが出来なかった」等とされているところである。少額短期保険業者における純資産額や保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかの基準であるソルベンシー・マージン比率は、その財務諸表に基づき算出・報告されるところ、当社においては、財務諸表が財務状況を適正に表示しているかどうかについて会計監査人の意見が表明されていない状況となっている。
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