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第13回神奈川活性化サロンを開催しました

 関東財務局横浜財務事務所では、神奈川県経済の中長期的な課題等について、企業経営者や有識者の方々と意見交換を行う場として「神奈川活性化サロン」を開催しております。
 今般、神奈川県内でも顕在化してきている人手不足問題について、課題解決に資する知見の共有を図るべく、第13回目となる「神奈川活性化サロン」を開催いたしました。
 今回のサロンでは、「人手不足を乗り越える企業の戦略と実践事例」をテーマとして、神奈川県内の労働市場の現状分析、中小企業における採用戦略の成功事例、そして地方企業による挑戦的な取組みが紹介されました。
 特に、「人手不足は構造的な問題であること」、「中小企業では生産性向上・働き方改革・魅力発信が不可欠であること」、「若者が挑戦できる環境づくりが地域の未来を左右すること」といった点が強調されました。

1.日時


令和8年3月17日(火曜)15時から17時35分

2.会場


横浜第2合同庁舎(神奈川県横浜市中区)

3.テーマ


人手不足を乗り越える企業の戦略と実践事例

4.参加者


神奈川県内の企業経営者・有識者12名

5.概要

1)開会挨拶

  • 関東財務局 横浜財務事務所長 星 肇
     神奈川県は経済規模が大きい一方、地域により人口減少や少子高齢化が進行しており、企業は人手不足・後継者不足・物価高騰など多様な課題に直面している。
     本日の活性化サロンは、人手不足問題をテーマに設定させていただいたので、この機会をぜひ積極的な意見交換の場として活かしていただき、神奈川県の発展・課題解決につながる知見の共有を図っていただきたい。


横浜財務事務所長による開会の挨拶

2)イントロダクション

  • 株式会社大和総研 政策調査部 主任研究員 鈴木 文彦 様
    「我が国の人手不足の構造と本日の論点」
     日本の人手不足は少子化と高齢化による構造的問題で、2040年前後に第二波が到来する。地方では現役世代が大幅に減少し、全国以上に影響が深刻化する見通し。特に技術職・医療福祉・現業職の不足が深刻で、事務職の過剰とミスマッチが拡大している。 
     待遇の改善として賃上げを行うには、付加価値・生産性の向上が必須となる。DX・AI活用や業務整理を含む、持続可能な人材戦略が求められる。



鈴木氏による講演

  • 株式会社浜銀総合研究所 調査部 副主任研究員 白須 光樹 様
    「限界が近づきつつある神奈川県内の働き手の増加」
     神奈川県の就業者数は、女性の労働参加の一段の進展により、コロナ禍の落ち込みから回復した。しかし今後は、男性の労働参加が既に先進国で高位にあることなどを踏まえると、供給増は期待しにくい。失業率は歴史的低水準で、人手不足はすでに構造的制約になっている。
     企業は雇用維持のため防衛的に賃上げを進めざるを得ず、インフレ圧力にもなっている。県内では外国人労働者が急増しており、幅広い業種で人手不足補完として受け入れが進んでいる。



白須氏による講演

3)講演

  • 株式会社タシロ 代表取締役社長 田城 功揮 様 (神奈川県平塚市、精密板金加工業)
    「人手不足時代に人が集まる中小企業の採用戦略 町工場の実践事例」
     私は7年前に家業へ入り、2023年に事業承継を行って代表となった。大学時代から数年間、NGOのマネジメントや国際協力に携わり、新卒では転職支援会社で働いてきた。現在は、日本経済の再興につながる取組みとして、町工場を人気の就職先にしていくことと、私も三代目なので、チャレンジングな跡継ぎたちを増やしていくことに尽力している。
     弊社は従業員数20名弱の小さい町工場で、入社当初は年間数人しか応募がなかった。当時、外国籍社員が7割以上で日本人の採用が進んでおらず、組織として限界を感じたため、異業種での経験を生かして、採用とブランディングを自らのミッションとして主導した。
     まず、地道に働き方改革を推進し、完全週休2日・年間休日120日・残業ゼロなど、若い人が働きたいと思える環境づくりを進めてきた。同時に、自社商品の開発や展示会・物販イベント等への継続的な出展を行い、会社の魅力や話題性を高めた。また、メディア露出・SNS発信・プレスリリースなど積極的な情報発信を行ってきた。ギフト・ショーで自社開発商品がグランプリを受賞したことにより、弾みが付いて認知度が上がり、その後は応募が年間300名を超えるまでに増えて、人手不足の状況が大きく改善した。
     また、社員はまず給料や休みなどの待遇を重視し、そのうえで仕事内容やビジョンへの共感を判断している。一方で、経営者はビジョンや事業の特徴を優先しがちで、両者の違いに気づいた。
     そこで私は、常に近隣の同業求人を調べ、給与水準が相場より10%低ければ応募は来ないという前提で考えている。給与水準や休日数などの待遇改善は採用の前提条件であり、ここを整えなければ候補者に選ばれないと感じている。
     採用は、ものづくりに興味があって、スキル向上の意欲のある方に絞っている。選考では多くの社員が関わり、応募者に評価ポイントやマッチする点を丁寧に伝えることで、安心感と入社後のミスマッチ防止につなげている。採用後については、評価制度・キャリアパス・資格取得支援を整えて、若手が成長できる環境を用意している。若手が主体的に活躍できる文化をつくることで、定着率も上がっている。
     人手不足の時代においては、ビジョンの策定、給与を上げる仕組みづくりも含めて、採用はまさに「経営そのもの」だと考えている。あわせて、働き方や会社の文化を変えなければ人は集まらず、働きやすさの改革が採用力の土台になる。さらに、人は会社そのものよりも、「どんな未来を描けるか」に惹かれるため、将来像がわくわくするものである必要がある。そして、最終的に会社の未来をつくるのは経営者の覚悟であり、その覚悟が結果として採用につながっていくと考えている。
     自社の取組みを一例として、挑戦と共創で人を惹きつける町工場のモデルを神奈川県から広げていきたいと思っている。



田城氏による講演
 

  •  タイムカプセル株式会社 代表取締役 相澤 謙一郎 様 (岐阜県岐阜市、神奈川県横須賀市、ソフトウェア開発事業)
    「横須賀から全国制覇 夢を現実にする方法」
     私は、岐阜県岐阜市と地元の神奈川県横須賀市に本社を置く2本社制のソフトウェア開発会社を運営している。2013年に創業し、地域に根差したIT開発拠点の全国展開を進めている。
     私たちは、「熱意ある人がいつでもどこでも挑戦できる社会を作る」という経営理念を掲げ、現在、全国8つ(気仙沼、美濃、四万十町、松山、伊万里、高千穂、都城、那覇)の地域に開発拠点を展開している。地方の若者がITを学び、地域企業のDXを支え、地域を元気にする活動を行っている。
     全国で若者と関わる中で、本当は可能性があるのに家庭事情などで夢を諦めてしまう若者が多いと感じている。私は「熱意と行動力があれば誰でも何者にでもなれる」、好きなこと、熱中していることとITスキルとの掛け算により挑戦の幅が広がるとの思いから、一緒に挑戦したいという若者を全国から集め、今では50名ほどのエンジニアが活躍するチームになっている。どんな地域でも、熱意ある若者が集まる“梁山泊”のような拠点をつくり、人材育成と同時に地域の活性化に貢献していきたい思いで活動している。
     本来は地元横須賀の学生たちに来て欲しいところだが、地元の学生は横浜・東京志向が強いため地元企業は選ばれにくい。一方で、地方の学生にとっては神奈川県は首都圏のため、横須賀も魅力的に映っている。
     そこで、地方の若者に選んでもらえる組織、ルールづくりが必要と考え、3万円で住めて生活が整う社宅を整備し、安心して働ける環境を用意している。入社後は1か月の研修で技術力と社会人の基礎を育て、コミュニケーション強化のために猿島ツアーなどの体験型研修も取り入れるなど、ベンチャーでも研修制度を充実させ、若い社員が仲間と繋がりながら成長できる組織づくりを進めている。
     さらに、「旅するように働く制度」で、全国どこの拠点でも体験的に1週間働けるようにし、社員同士の交流を深めて仲間づくりと学びの幅を広げ、離職を防いでいる。
     加えて、奨学金を利用して大学等に通っていた社員がいるため、一定期間勤務した場合に、会社が奨学金の返済を支援する制度を設けている。この制度は毎年利用者がおり、社員の経済的負担軽減につながっている。
     こうした制度を整えていることで、熱意のある人たちが集まってきている。そして、若者が諦めずに何者にでもなれる、そんな挑戦できる社会を作りたい。そのために、横須賀で基盤をつくることはもちろんだが、横須賀以外の地域の若者も支援するため、横須賀から47都道府県すべてに拠点を広げ、“全国制覇”を実現し、日本を元気にしていきたいと思っている。


相澤氏による講演

4)意見交換

講演内容を踏まえ、各企業・各業界が抱える課題や取組みについて情報共有が行われるとともに、自由闊達な意見交換が行われました。



意見交換の様子

5)閉会挨拶

  • 関東財務局 横浜財務事務所次長 東山 達郎
     本日の人手不足に関する議論が今後の課題解決につながることを期待する。
     横浜財務事務所では、今後も神奈川県経済の活性化に資する取組みを行っていくので、引き続きご協力をお願いしたい。



横浜財務事務所次長による閉会の挨拶

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