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平成29年度「金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム」の開催結果について

 北海道財務局において、地域密着型金融の取組みに関する知見・ノウハウの共有化等を図ることを目的として、以下の通り、金融仲介の質の向上に向けたシンポジウムを開催しました。

1.開催日時・場所 

  • 平成30年3月12日(月曜日)13時30分から16時まで
  • 札幌第1合同庁舎 2階講堂(札幌市北区北8条西2丁目)

2.参加者の概要 

 約120名(地域金融機関、士業団体、商工団体等)

3.議事要旨 

(1)開会挨拶

北海道財務局長  髙 秀樹

 

(2)基調講演(下線部をクリックすると配付資料をご覧頂けます)

  『中小企業からみる金融環境の変化について』(PDF形式:1.53MB)
 (一社)北海道中小企業家同友会 代表理事 守 和彦 氏

 

講演概要

  • 北海道では、中小企業が組織率で99.8%、従業員比率で83.5%を占め、中小企業を守らなければ地域が守られない状況。また北海道の2017年の企業の休廃業は倒産件数の6.7倍(全国では3.3倍)。地方において一企業がなくなると、周辺企業への被害、住民の減少に繋がるなど、地域社会に大きな影響が及ぶ。
  • 報道では、金融仲介機能のベンチマーク導入後も道内信金信組の73%が「経営に変化なし」と回答したが、中小企業の経営者との関係を見直す契機にしてほしかった。金融機関は、内向きのコスト削減や優良企業に対する金利競争だけに走るのではなく、中小企業に対しリスクマネーを供給し、リスクに見合う金利を取って収益を稼ぐという考え方を持たなければならない。
  • 金融機関が、経営が厳しい企業に対し、経営改善に向けた取組みを進める中で経営者保証を外すことが必要で、そのためには、積極的に企業を訪問して経営者の話を聞き、経営者保証を外すための課題克服を共に考えることに時間を割く仕組みづくりが重要。
  • 金融機関は当座貸越枠の設定により、経営者が資金繰りを気にせず仕事に専念できる環境を提供してほしい。金融機関にとっても、当座貸越枠のモニタリングにより、決算書では分からない企業のお金の動きや経営の実態を把握できるようになる。
  • 自ら金融機関に相談にくる経営者のみならず、自社の抱える問題を認識できていない経営者に対してこそ、金融機関が訪問し話をよく聞いてあげること(寄り添った金融)が必要。金融機関を退職した人を再雇用し、「キャリアアドバイザー(仮称)」として取引先企業を継続的に訪問していけば、課題の洗い出しやニーズの的確な把握に役立ち、業績改善に繋げられるのではないか。
  • 中小企業家同友会では、持続可能な地域づくりのために中小企業振興基本条例の制定に取り組んでおり、是非お力貸しいただきたい。
     

(3)パネルディスカッション

テーマ

地域企業の価値向上・地域活性化のためのアドバイスとファイナンス
北海道における事業承継の課題と地域金融機関に求められる役割

 

パネリスト(順不同)

  • 株式会社北海道銀行 執行役員 札幌・石狩、後志地区営業担当 鈴木 誠 氏
  • 旭川信用金庫 地域振興部長 荒山 恭一 氏
  • (一社)北海道中小企業家同友会 代表理事 守 和彦 氏
     

コーディネーター

  • 小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻 教授 齋藤 一朗 氏

  

議事概要

   株式会社北海道銀行 鈴木執行役員(PDF形式:205KB)

  • 企業と地域社会に貢献するためには、事業承継問題をどのように解決していくかが最も重要なテーマであるとの認識に立ち、本部による営業店サポート体制を強化し、全行的な取組として推進。
  • 日常の営業活動において、支店長や担当者が、企業経営者と膝を交えて対話し、企業が抱える課題を共有していくことが第一歩。その課題の一つに事業承継があり、専門的なノウハウ等が必要になる場合は、本部セクションや外部の専門機関等と連携して、顧客の状況に応じた様々なツールを活用してサポートを提供していく。また、経営者保証を外すためにどのような改善等が必要か、サポートやアドバイスを行うことも金融機関の役割と認識。
  • 後継人材の育成に向けた取組みとして、道内取引先企業の次世代経営者を年間30名程度集め、経営全般について勉強する「道銀・経営塾」を開催。(19期開催、卒業生は552名)。また、卒業後も、卒業生の交流・自己研鑽の場として、業界・地域ごとに勉強会等を開催。
 
   旭川信金 荒山地域振興部長(PDF形式:326KB)
  • 平成28年度から北海道事業引継ぎ支援センターと連携して事業承継支援に本格的に取組み始めた。取引先企業から営業店に相談等が寄せられた際は、「事業先情報カード兼引継書」をベースに経営者の話をよく聞き、本部の営業推進部と地域振興部が連携・サポートする。
  • 事業承継問題については、しっかりと段取りを踏み、長い時間をかけて取り組んでいくことの必要性を企業経営者に理解してもらうことが重要。また、事業承継問題に取り組む金庫職員のレベル向上や、地域における影響も考えながら取り組むことが必要。
  • 信用金庫・信用組合は、地元をよく知っていることが強み。例えば、地域銀行の持つノウハウ等を借りて支援を行うなど、他機関とも協調・補完し合いながら地域を支えることが必要。

  (一社)北海道中小企業家同友会 守代表理事
  • 事業承継問題は、地方にいくほど深刻な問題。金融機関はどれほどの危機感をもっているのか。決して支店任せや片手間の仕事ではなく、全行的にスピード感をもって取り組まなければ間に合わない。
  • 事業承継で最大の課題が経営者の個人保証。個人保証をゼロにするための方策を共に考えることで事業承継は広がるのではないか。
  • 企業は、借入をしている金融機関に対して良い話は出来ても悪い話が出来ないのが実態。企業が困った時に、本音で相談できるようになるためには信頼関係(会う回数×時間)が必要。それが出来る仕組みづくりをぜひ考えていただきたい。

  小樽商科大学 齋藤教授
  • 中小企業が地域を支えているという実態がある一方、中小企業経営者の高齢化が進む中で、後継者不在を背景にした休廃業が増加している実態がある。事業承継問題は、一企業の経営上の問題に止まらず、地域金融機関の経営基盤、ないしは地域社会を直撃する深刻な問題として捉え、考えていくことが重要。
  • 中小企業経営者と地域金融機関ともに事業承継問題を含め目指しているところは同じであるにもかかわらず、現実には経営者の思いと金融機関の対応にある種のギャップが生じてしまう。このギャップを解消するためには、両者の信頼関係をいかに構築するべきかといった根源的課題のほか、金融マンとしての人間力も問われてくるのではないか。
     
(以上)
 

本ページに関するお問い合わせ先

北海道財務局理財部金融監督第一課(調整担当)
電話番号:011-709-2311(内線4355)

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