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平成28年度「金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム」の開催結果について

 北海道財務局において、地域密着型金融の取組みに関する知見・ノウハウの共有化等を図ることを目的として、以下の通り、金融仲介の質の向上に向けたシンポジウムを開催しました。
 

1.開催日時・場所 

  • 平成29年3月15日(水曜日)13時30分から16時まで
  • 札幌国際ビル 8階 国際ホール(札幌市中央区北4条西4丁目1番地)

2.参加者の概要 

約110名(地域金融機関、士業団体、商工団体等)
 

3.議事要旨 

(1)開会挨拶

北海道財務局長 原田 要暢

 

(2)基調講演(下線部をクリックすると配付資料をご覧頂けます)

『バンカーはコンサルタントになりえるか ある企業再生案件に触れて感じたこと』(PDF形式:1.43MB)

ルートエフ株式会社 代表取締役(金融庁参与) 大庫 直樹 氏

 

講演概要

  • 一般的な企業再生手法(金融機関による債権放棄等を作った上で、不採算部門から撤退し、その後に外部人材活用による採算部門の業務改善を行う)は、金融機関収益の低下、雇用喪失、外部人材依存により金融機関内に企業再生スキルが蓄積していかない等のマイナス面も大きい。
  • A県のB地域銀行では、外部コンサルタントを雇い、5年の年月と相応のコンサルティング料を支払って、数次に分けて機能別(営業・生産等)のチェックポイントを体系化、専門部署を設置してテイラーメイドでコンサルティングを行う態勢を構築し、融資機会の創出とコンサルティング料により銀行収益の増加につなげる取組みを行っている。
 

B地域銀行によるX社への企業再生支援事例を紹介

  • 当該取組みは一朝一夕の成果ではない。他の金融機関においてもこれを再現するためには、以下5つの問いかけに応えることが必要。
 
  1. 実際にコンサルティングが可能になる態勢になるまで、我慢し続けることができるか(年月・費用)
  2. 企業再生の中心になるリーダー(コンサルティングにバンカーとしてのキャリアを賭けられる人材)を見つけられるか
  3. 企業再生手法を組織知にするために、数年間にわたり外部コンサルタントを雇用するだけの財務的な余力はあるか
  4. 担い手となる30代の法人融資経験者を、優先的に投入できるか
  5. 銀行として継続的に推進していくにたるだけの、収益に反映できるか(融資から生まれる利息+M&A等各種手数料+コンサルティング料)
  • 融資というものは、根源的には、返済の蓋然性が高いか否かを基準として判断されるべきもの。X社は債務超過、赤字続きだが、B地域銀行において返済の蓋然性が結構高いと確認できているにも関わらず、そうした状況でお金を貸す仕組みがないとすれば、その仕組みを作り出している規制上の問題を解決すべきではないか。
 

(3)パネルディスカッション

テーマ

地域金融機関における『顧客との「共通価値の創造」の構築』 金融仲介機能のさらなる発展・進化に向けた取組みについて

 

パネリスト(順不同)

  • 阿部鋼材株式会社 代表取締役社長 阿部 大祐 氏
  • 株式会社北洋銀行 常務取締役 融資本部長 竹内 巌 氏
  • 札幌信用金庫 常務理事 融資部長兼地域経営サポート部長 小谷 寿勝 氏
  • ルートエフ株式会社 代表取締役 大庫 直樹 氏

 

コーディネーター

  • 小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻 教授 齋藤 一朗 氏
 

議事概要

阿部鋼材株式会社 阿部社長(PDF形式:38.7KB)
  • 金融機関には、決算書の定量情報のほかに、決算書の背景にある企業の姿を実際に見ていただき、会社の取組み姿勢や雰囲気等、定性的な情報を把握してもらいたい。当社では、金融機関の担当者が変わる度に、工場見学のお誘いをするが、実際に来られた方は2割ほどに止まる。
  • 金融機関には、企業のニーズに沿った外部人材の紹介等、先ずは「繋ぐ」ということを意識して取組まれることを期待している。
  • 事業再生に取組む際、企業自身では当たり前なこととして気付かない点もあるが、金融機関には、そうした点を含め、客観的な目線で一番効果的と思われる改善策を提言して頂けると非常にありがたい。
 

株式会社北洋銀行 竹内常務

  • 金融機関は、顧客企業に出向いて現場を見て対話を重ねることにより、決算書の数字を生きたものとして捉えることができるようになると考えている。
  • 定性情報は、情報の受け手の感性や見方により受け止め方が全く異なってしまうケースが多い。それを克服していくためには、何故そのような受け止め方をしたのか、支店長クラスが部下と議論する中で鍛えていくことが重要。
  • 人材育成は、熱意を持ったよき聞き手を育てることが重要。そのため、上司は、顧客の懐に飛び込み、本音で付き合える人間関係をベースとした緊張感のある折衝を繰り返し部下に見せることが必要。
 
 

札幌信金 小谷常務

  • 当庫では、一人でも多くのお客様とお会いし、より強い信頼関係を構築していこうという基本的な考え方の下、担当者あるいは上席者等が顧客を定期的に訪問し、顧客理解を深める取組みを継続することにより信頼関係の強化を図っている。その際、顧客が私共に求めているのは友人、知人としての関係ではなく、豊富な専門知識を持った金融機関人であるという自覚、緊張感を持って対応しなければ信頼は得られないと考えている。
  • 信用金庫では、狭い営業区域であるが故にある担当者が同じ顧客を複数回担当することや、役職員の大部分が地域に長く生活・勤務しており、地域の情報を詳細に把握している場合も多い。このことが安定した資金供給やスピーディーな融資判断を容易にしている面があり、信金の持ち味と感じている。
  • 経営者に敬遠されがちな話題として、経営改善に関するものが挙げられ、特に経営者自身が認識されている問題を追い打ちをかけるように指摘すると、気分を損ねられる経営者もいる。また、自身の成功体験を覆されるような話を受入れようとしない経営者もおられ、顧客との共通価値の創造に際して一つのハードルとなっている。

 

ルートエフ株式会社 大庫社長

  • 定性情報の受け止め方については、一定の訓練の積み重ねが必要。例えば、半期ごとに重要な取引先を抽出し、取引先の発言をどのように受け止めるべきか、支店長、担当者、渉外や融資の課長等を交えて徹底議論するような取組みを繰り返すことが重要と思われる。
  • 情報の受け渡しについては、相手方が言われていることをどれほど聞き込むことが出来るか、そのための鍛錬をいかに積んでいるかということも非常に重要だと思われる。

 

小樽商大・齋藤教授

  • テイラーメイドで定性情報を分析する、あるいは事業性評価を行う場合、担当者よりも広い視野をもった経験豊富な支店長の力量が問われてくるのではないか。
  • 定量情報と定性情報を繋いで、一貫したストーリーの中で理解していくこと、あるいは、定量情報の裏取りとして定性情報を理解していくことが重要だと思われる。
  • 「感じる」、「聞く」、「繋ぐ」ということを端緒として、顧客とのコミュニケーションを取り結び、顧客理解を進めていくことが重要。日常業務で行われている「感じる」、「聞く」、「繋ぐ」の意義を改めて問い返して、活動の連鎖として捉え直すことにより、新たな気持ちでの取組みが出てくるのではないか。
(以上)

本ページに関するお問い合わせ先

北海道財務局理財部金融監督第一課(調整担当)
電話番号:011-709-2311(内線4355)

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