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大臣挨拶要旨(令和7年7月29日)

全国財務局長会議の開催に当たり、一言挨拶申し上げます。

日本経済は、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等のリスクに直面していますが、足元では緩やかに回復しています。名目GDPは600兆円を超え、過去最高水準の設備投資100兆円超えが実現し、賃上げ率は今年の春闘において、2年連続で5%を上回る水準となるなど、成長と分配の好循環が動き始めています。
 政府としては、先月閣議決定された「骨太方針2025」に基づき、当面のリスクへの備え・対応に万全を期しつつ、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとする必要があります。企業の稼ぐ力を継続的に高めるため、GX・DX、スタートアップ、経済安全保障等の分野において、官と民が連携した投資が行われる「投資立国」の取組を進めるとともに、地域の中堅・中小企業を含めて、物価上昇を上回る賃上げを起点に、国民の所得と経済全体の生産性を向上させるべく、適切な価格転嫁や経営基盤を強化する事業承継・M&Aの後押しなど、施策を総動員してまいります。

日本経済にとっても、米国の関税措置に起因する不確実性が課題とされてきた中で、今月23日に日米間で米国の関税措置に関する合意に至りました。具体的には、我が国の基幹産業である自動車及び自動車部品について、本年4月以降に課された25%の追加関税率を半減し、既存の税率を含め15%とすることで合意しました。相互関税については、25%まで引き上げられるとされていた関税率を15%にとどめることとなりました。
 そのうえで、7月25日に開催された米国の関税措置に関する総合対策本部における総理指示を踏まえ、財務局・財務事務所においても、引き続き、地域企業の方々から、今回の合意等の我が国への影響等を聞いていただくとともに、様々な相談に対しては丁寧な対応をお願いしたいと考えております。

昨年以降、日銀による政策金利の引上げや長期国債買入れの減額など、金融環境が変化する中で、市場参加者との丁寧な対話を行いながら適切な国債管理政策に努めることの重要性が高まっています。また、大災害や有事に備えた財政余力を確保しつつ、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保していくことも必要です。我が国の経済財政に対する市場からの信認を確実なものとするために、経済再生を図っていく中で、財政健全化の「旗」を下ろさず、2025年度から2026年度を通じた可能な限り早期のプライマリーバランス黒字化などの財政健全化目標の達成を目指し、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させてまいります。

税制につきましては、経済成長と財政健全化の両立を図るとともに、少子高齢化、デジタル化、グローバル化等の経済社会の構造変化に対応したあるべき税制の具体化に向け、包括的な検討を進めます。具体的には、物価上昇局面の対応や再分配機能の確保などの観点を踏まえ所得税の改革の検討を進めるほか、EBPMの取組や新たな国際課税ルールへの対応などを進めてまいります。

また、現下の厳しい安全保障環境の下、いわゆる経済安全保障の考え方がその重要性を増しています。財務省としても、本省・地方組織が一体となって、持ち得る政策ツールを最大限に活用しながら、日本の経済安全保障に貢献していくことが求められます。各財務局におかれましては、対内直接投資を通じた技術流出を防止するため、引き続き、地域企業へのアウトリーチ等を通じて、投資審査制度の周知や情報収集を行っていただきたいと思います。

地域経済につきましては、従来どおり、各財務局からの報告を基に、管内経済情勢報告の結果として取りまとめ、今回の総括判断は「一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復しつつある」として、前回から判断を「据え置き」といたしました。管内経済情勢報告は、各地域の経済動向を俯瞰的に把握することができる、非常に有益な報告であると考えております。各財務局・財務事務所において、米国の関税措置による地域経済への影響を含め、地域の経済や産業の状況について、きめ細かな把握と分析を行っていただくようお願いします。

次に金融行政について申し上げます。

趨勢的な人口減少・高齢化の中で地域が持続的に発展していくため、「地域金融」には、有望なプロジェクトへの資金供給にとどまらず、地域事業者へのM&A支援、地域に必要な事業・人材の呼び込み、地域企業のDX支援等を通じて、地域経済に貢献する、「地域金融力」の更なる発揮が求められており、政府としてもこれを強力に推進する必要があります。
 その際には、こうした地域金融力の担い手として期待される地域金融機関等が、その役割を十分に発揮できるための環境整備も併せて進める必要があります。具体的には、資本参加先の適切な経営管理と業務運営の確保等を含む株式引受や優先出資等による資本参加制度や資金交付制度の期限延長・拡充などを検討してまいります。
 今後、私の下で、関連施策をパッケージ化した「地域金融力強化プラン」を年内に策定する予定です。同プランを強力に推進していくためには、各財務局の皆様の力が不可欠となりますところ、御協力をよろしくお願いいたします。

財務局の皆様におかれましては、「財務局の使命」の実践に向けて、引き続き、地元の関係者や本省庁の職員と連携し、強い責任感と誠心誠意をもって政策遂行に当たり、地域の期待に応えていただきたいと考えております。

以上、私の挨拶とさせていただきます。