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大臣挨拶要旨(令和7年1月30日)

全国財務局長会議の開催に当たり、一言挨拶申し上げます。

前回の会議では、日本経済は、デフレ脱却に向けて、回復の兆しをしっかりとした足取りにするチャンスを迎えており、このチャンスを取り逃してはならないと考えている、と申し上げました。賃金上昇が物価上昇を安定的に上回り、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していく必要があります。

こうした中、賃金・所得の増加を最重要課題とし、省力化・デジタル化投資支援等の賃上げ環境の整備や成長分野における投資促進などにより、生産性や付加価値を高め、安定的に賃金・所得が増えていくメカニズムを構築してまいります。そのため、「日本経済・地方経済の成長」、「物価高の克服」及び「国民の安心・安全の確保」を柱として閣議決定した「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」と、その裏付けとなる令和6年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、令和7年度予算、そして令和7年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。
 同時に、財政は国の信頼の礎であり、我が国を取り巻く諸課題に的確に対応するため、歳出・歳入両面の改革を着実に推進し、日本の信用や国民生活を守るための財政基盤を平時より備えることが不可欠です。日本の財政は、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にあるなど、引き続き厳しい状況にあることも踏まえ、「経済財政運営と改革の基本方針2024」で示された「経済・財政新生計画」の枠組みの下、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、財政健全化に取り組んでまいります。

このように、経済あっての財政との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。

令和7年度予算では、官民連携のもとでの「AI・半導体分野の投資促進」や「GX投資促進」の実施、「こども未来戦略」に基づく子育て支援の本格実施、「防衛力の抜本強化」の着実な実施といった、複数年度で計画的に取り組むこととしている重要課題への対応のほか、地方創生交付金の倍増や、内閣府防災担当の予算・定員の倍増など、重要政策に予算を重点的に配分しています。

あわせて、公務員・教職員・保育士の給与改善や物価動向の反映などを行いつつ、政策的予算を適切に確保するなど、「経済財政運営と改革の基本方針2024」に基づき、経済・物価動向等に配慮しつつ、これまでの歳出改革努力を継続しています。

令和7年度税制改正につきましては、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応することとしております。物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額等の引上げ及び大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行います。また、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充するとともに、国際環境の変化等に対応し、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置や外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行います。

令和7年度予算及び関連法案が、現下の我が国の経済社会に果たす役割を踏まえ、早期の成立に向けて、説明を尽くしてまいります。

さて、全国財務局長会議では、毎回、各財務局からの「管内経済情勢報告」を取りまとめ、財務省としての総括判断を示していますが、今回は、「一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復しつつある」として、前回から判断を「据え置き」といたしました。
 管内経済情勢報告は、各地域の経済動向を俯瞰的に把握することができる、非常に有益な報告であると考えております。各財務局・財務事務所におかれては、地域の経済状況について、統計分析や企業ヒアリング等の様々な取組を通じて、きめ細かな把握を行っていただくようお願いします。         
 政府は「地方創生2.0」に取り組んでおり、各地域においても様々な取組がなされていると承知しています。そうした取組等が地域経済にどのような影響を及ぼしているのかについても、しっかりと把握をしていただくようお願いします。

次に、金融行政について申し上げます。

地域金融機関は、地域にとって重要な社会インフラであると同時に、地域企業の価値向上等を通じて地域経済の回復・成長を支える「要」です。足元、物価上昇や人手不足・後継者不足への対応等、地域の事業者が抱える経営課題が多様化する中、地域金融機関は、地域活性化に向けて、資金繰り支援にとどまらず、事業者の課題に対し付加価値の高い支援を提供することが求められています。そのために、自らの収益基盤を強化し、持続可能なビジネスモデルの確保に向けた取組を進めることが重要です。

各財務局におかれては、継続的なモニタリングや対話の充実を通じ、地域金融機関に対して、金融仲介機能の十二分な発揮を促していただきますよう、よろしくお願いいたします。

また、成長型経済への移行に金融面から貢献するため、貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」の政策を推進してまいります。NISA口座数が2500万口座に達するなど、国民の資産形成に関する関心は大きく高まっています。安定的な資産形成のためには、一人ひとりが、投資に伴うリスクを踏まえつつ、個人のライフプランやライフステージにあった資産形成の手段を適切に選択できることが重要であり、国民の金融リテラシーの向上に向けて、全国レベルで継続的に取り組まなければなりません。

そのためには、地方における金融経済教育の推進が不可欠であり、金融庁・財務局一体の取組なくしては実現しないと考えています。財務局と金融庁がしっかりと連携し、J-FLEC(金融経済教育推進機構)や地域のステークホルダーとも協働しつつ、地域で金融経済教育の推進に取り組んでいただきますようお願いします。

最後になりますが、財務省の組織内部に目を向ければ、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という組織理念の下、常に国民の視点に立って、高い価値を社会に提供できる組織風土をつくりあげていくことが重要です。そのため、私としても、財務局長の皆さんとともに、働き方改革を含め、職員が誇りを持って働ける環境づくりに取り組んでまいりますので、引き続き御協力をよろしくお願いいたします。

以上、私の挨拶とさせていただきます。