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大臣挨拶要旨(令和5年1月31日)

全国財務局長会議の開催に当たり、一言挨拶申し上げます。

まずはじめに、日本経済については、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、一部に弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いております。一方、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、日本経済を取り巻く環境には厳しさが増しております。
 こうした中、足元の物価高を克服しつつ、日本経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せていく必要があります。そのため、先に成立した令和4年度第2次補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、同補正予算と一体的に編成した令和5年度予算、そして令和5年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応や累次の補正予算の編成等により、過去に例を見ないほど厳しさを増しております。財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠であると考えております。責任ある経済財政運営を進めるに当たっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要であります。引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針2022」等における2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革を着実に推進してまいります。
 令和5年度予算は、歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算としております。
 具体的には、新たに策定された国家安全保障戦略等の下での防衛力の抜本的な強化やその裏付けとなる財源の確保、本年4月に新たに設置されるこども家庭庁を司令塔とした、こども・子育て支援の強化、GXの実現に向けた「成長志向型カーボンプライシング」による民間投資を支援する仕組みの創設、デジタル田園都市国家構想の下での地方公共団体のデジタル実装の加速化や地方創生に資する取組への支援など、現下の重要課題に正面から向き合い、一定の道筋を付けております。
 また、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費を4兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費を1兆円措置し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や物価高騰、世界的な景気後退懸念など、予期せぬ状況変化に引き続き万全の備えを講じることとしております。
 同時に、「経済財政運営と改革の基本方針2022」等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成するとともに、社会保障関係費以外について、防衛関係費の増額を達成しつつ、経済・物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行うことを通じて、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しております。

令和5年度税制改正については、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行うとともに、スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化するための税制上の措置を講ずることとしております。また、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を設けるほか、国際合意に沿ってグローバル・ミニマム課税を導入することとしております。資産課税では次世代への早期の資産移転及び資産の再分配機能を確保する観点から、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築することとしております。このほか、法人課税や車体課税の見直し、インボイス制度の円滑な実施に向けた改正なども行うこととしております。また、防衛力強化に係る財源の安定確保に向けた税制措置について、与党の税制改正大綱を踏まえ、閣議決定しております。

地域経済については、管内経済情勢報告のとりまとめ結果によりますと、本年1月の全局の総括判断は「物価上昇や供給面での制約等の影響がみられるものの、緩やかに持ち直している」とし、前回から判断を据え置いております。
 各財務局におかれては、地域の経済状況について、引き続き、きめ細かな把握を行っていただきたいと思います。

次に、金融行政について申し上げます。
 足元では、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に加え、世界的な物価高騰に直面する中、地域金融機関においては、引き続き、事業者の実情に応じた支援に積極的に取り組むことが重要です。
 また、昨年12月には、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて、融資の際の保証徴求手続の厳格化などを盛り込んだ監督指針の改正を含む「経営者保証改革プログラム」を策定・公表し、あわせて、官民金融機関に対して要請文を発出したところです。
 各財務局におかれては、継続的なモニタリングや対話の充実を通じ、地域金融機関に対して、事業者支援の徹底や経営者保証に依存しない融資慣行の確立を促していただきますよう、よろしくお願いいたします。

次に、本年は日本がG7の議長国を務めます。
 5月に開催する新潟市でのG7財務大臣・中央銀行総裁会議を含め、年間を通じて国内外で関連の会議を主催し、世界経済が直面する課題への対処、世界経済の強靭化に向けた取組を協調して進めてまいります。
 関東財務局を始め、各財務局におかれては、G7の成功に向けてご協力いただきますよう、お願いいたします。

最後になりますが、財務省の組織内部に目を向ければ、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という組織理念の下、常に国民の視点に立って、高い価値を社会に提供できる組織風土をつくりあげていくことが重要です。
 本年も、地方支分部局を含めた財務省全体が一丸となり、着実に取組を進めるべく、各財務局におかれても、引き続きご協力をよろしくお願いいたします。

以上のお願いを申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。