エイ・ワン少額短期保険株式会社に対する行政処分について
令和元年5月17日
近畿財務局
近畿財務局
1.エイ・ワン少額短期保険株式会社(本社:大阪市中央区。法人番号:7120001119523。以下、「当社」という。)については、立入検査の結果や保険業法第272条の22第1項の規定に基づき求めた報告等を検証したところ、以下のとおり、経営管理態勢、法令等遵守態勢などに重大な問題が認められ、その結果として多数の法令違反や不備が確認された。
(1)経営管理態勢
・取締役会の招集権者である代表取締役社長は、取締役会を定期的に開催しておらず、取締役会は不祥事件対応等の重要な業務執行にかかる議論を行っていないなど、当社は、社長の独断専行による意思決定等を牽制できない態勢となっており、ガバナンスが機能していない。
・当社は、営業基盤拡大を最優先とする組織風土となっていることから、業務拡大に応じた適切な内部管理態勢確保に必要な人材を配置せず、業務運営を担当者任せとし、実効性の確認も怠っているなど、業務運営態勢に問題が認められる。
(2)法令等遵守態勢
・当社は、保険募集資料の記載不備等に関する不祥事件が発生したことを受けて、保険募集資料等の「総点検」を実施したものの、その実効性が確保されていない。
これは、当事者意識や危機感がないまま経営陣に点検の知識がないとして、点検態勢や確認態勢を整備せずに担当者任せとしているなど、経営陣の法令等遵守意識が欠如していることに起因している。
・当社は、保険募集資料等の適切性を確保するための牽制体制を整備していなかったことから、一部のコースの保険料を担当者が独断で変更したことを看過する等し、保険料の過剰徴収が発生しているにもかかわらず、保険料の返戻対象契約者の調査・特定に当たり、十分な検討を行っていない実態が認められた。
・上記保険料の過剰徴収等、検査で問題が認められた事案について、全件調査の実施及び結果の報告を求めたところ、未だ調査が完了していないものがあるほか、調査対象から一部商品を除外するなど、調査の実効性に欠ける問題が認められた。
・経営陣は募集方法の適切性に関しなされた顧問弁護士からの提言について、営業を優先し、検討していなかった。
(3)保険募集管理態勢
・当社は、前回検査において、名寄せ管理不十分により、少額短期保険業者が引受できる上限金額を超えた契約があることを指摘されたものの、名寄せの改善状況について確認を行っていなかったことなどから、今回検査においても、同様の原因による上限規制違反が判明しており、前回検査の指摘事項は改善されていない。
これは、経営陣に不備が発生する認識がありながら、問題意識が希薄であったことから、対応を担当者任せにするのみで、担当者が特段の対応を行っていないことを看過していることに起因している。
(4)顧客保護等管理態勢
・当社は、保険金支払いに関して、保険金の金額等の判断に当たり、その正確性及び妥当性を検証する態勢を整備していないことから、家財保険及び医療保険において多数の付随的な保険金の支払漏れが認められた。
これは、経営陣が、営業を優先する中、保険金支払管理態勢構築の必要性を認識していなかったことから、保険金支払管理を担当部署任せとしており、担当者が属人的に業務を行い、牽制が働いていなかったことに起因している。
2.このため、本日、当社に対し、保険業法第272条の25第1項の規定に基づき、以下の内容の業務改善命令を発出した。
(1)保険募集資料等の総点検を速やかに実施し、判明した保険募集資料等の記載不備については、保険契約者等に対し、十分に説明を行うなど適切な顧客対応を実施すること。
(2)保険業法第272条の22第1項に基づく平成31年3月1日付報告徴求命令により求めた全件調査(付随的な保険金の支払漏れ等)に関して、未了となっている調査を速やかにかつ実効的に完了すること。
(3)判明した保険料の過剰徴収等保険募集に係る顧客被害及び判明した付随的な保険金の支払漏れ等保険金支払いに係る顧客被害について、適切な態勢を整備した上で、迅速な顧客対応を行うこと。
(4)健全かつ適切な業務運営を確保するため、以下の観点から、経営管理態勢等を抜本的に見直し、その改善及び強化を図ること。
1)経営管理態勢の改善及び強化
・業務改善命令に至ることになった問題等が発生したことに関して経営管理、法令等遵守に係る経営責任を明確化すること。
・業務執行にあたる代表取締役社長の独断専行に対し、取締役会が経営監視・牽制機能を適切に発揮することによる経営管理態勢の確立を図ること。
・本社管理部署への保険業務精通者の配置及び業務量に合わせた適正な人員の配置を行うこと。
2)法令等遵守態勢の改善及び強化
・全役職員及び代理店等の法令等遵守意識の徹底を図ること。
・法令等遵守態勢の抜本的な見直しを図り、検査指摘事項や顧問弁護士等の第三者からの指摘について真摯に対応する態勢を整えること。
3)保険募集管理態勢の改善及び強化
・適切な名寄せ管理等の仕組みの構築を行うなど、保険募集管理態勢を整備すること。
・適切な業務運営を行うための社内規則等の見直し等を行うとともに、募集管理担当者及び代理店等に対する指導及び教育を徹底すること。
4)顧客保護等管理態勢の改善及び強化
・適切な牽制体制の構築を行うなど、保険金支払管理態勢等を整備すること。
・適切な業務運営を行うための社内規則等の見直し等を行うとともに、支払事務担当者等に対する指導及び教育を徹底すること。
5)役職員及び代理店等に対する指導及び教育の徹底
・上記2)に係る全役職員及び代理店等に対する法令等遵守意識の徹底や、上記3)及び4)に係る役職員及び代理店等に対する指導及び教育の徹底に関しては、見直し後の社内規則等を本社関係部署より役職員及び代理店等に対して直接周知すること。その際、役職員は少なくとも1日通常業務から完全に離れ研修に専念することにより、その徹底を図ること。
(5)上記(1)~(4)に関する業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの)を令和元年6月17日までに提出し、直ちに実行すること。
(6)上記(1)~(4)の実行後、当該業務改善計画の実施完了までの間、1ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和元年6月末日とする。)。
本ページに関するお問い合わせ先
財務省近畿財務局
理財部金融監督第4課保険監督室
電話:06-6949-6371