令和7事務年度「新潟県信用金庫・信用組合職員勉強会」を開催しました
関東財務局新潟財務事務所では、新潟県信用保証協会の協力の下、新潟県信用金庫協会、新潟県信用組合協会、信金中央金庫新潟県分室、全国信用協同組合連合会新潟支店との共催により、令和7事務年度「新潟県信用金庫・信用組合職員勉強会」を開催しました。
1.日時・場所
令和8年4月8日(水曜)14時から17時15分 全国信用協同組合連合会新潟支店
2.参加機関・参加者
新潟信用金庫、長岡信用金庫、三条信用金庫、新発田信用金庫、柏崎信用金庫、上越信用金庫、新井信用金庫、村上信用金庫、加茂信用金庫、新潟縣信用組合、興栄信用組合、はばたき信用組合、協栄信用組合、巻信用組合、新潟大栄信用組合、ゆきぐに信用組合、糸魚川信用組合、新潟県信用組合協会、信金中央金庫新潟県分室、全国信用協同組合連合会新潟支店、新潟県信用保証協会、金融庁総合政策局リスク分析総括課リスク管理検査室、関東財務局新潟財務事務所
3.テーマ
金融庁総合政策局リスク分析総括課リスク管理検査室の小笠原室長より「金融機関における粉飾等予兆管理態勢の高度化に向けた取組と課題」を題材とした基調講演をいただいた後、参加者はグループに分かれ、架空の粉飾決算の事例を用いて意見交換を行った。
4.結果概要
1)開会挨拶(新潟財務事務所 武藤所長)
現在の社会経済情勢は日々刻々と変化しており、原材料費・人件費の高騰や金利上昇による負担増加により、事業者が困難に直面している。地域金融機関においては、事業者が抱えている課題を的確に捉え、早期に経営改善・事業再生支援を行うことで、事業者を支えるとともに、自らの信用リスクを適切に把握し管理することが求められている。
金融庁公表資料「金融機関における粉飾等予兆管理態勢の高度化に向けたモニタリングレポート」においては、「会計不正・粉飾決算・資産流用が増加基調であり、突発破綻の事例も多数発生している」とされており、信用リスク管理態勢の強化は全国的な課題となっている。
このような状況を踏まえ、今般小笠原室長をお招きして、基調講演を拝聴する機会を設けた。
講演後、参加者はグループワークを行う時間があるため、他の金融機関の職員と意見交換する中で、新たな気付きや交流を得られることを期待する。

2)基調講演「金融機関における粉飾等予兆管理態勢の高度化に向けた取組と課題」
信用リスク管理は金融機関業務の中核をなす重要な要素である。質の高い金融仲介機能を持続的に発揮するためには、財務の健全性やリスク管理の適切性を維持することが必要であり、その前提として融資規律の確保が重要である。金融機関においては、融資先とのコミュニケーションを深めて経営状況やガバナンスの実態を把握し、期中における事業状況の変化を適時に捉えるなど、与信管理態勢の一層の高度化等に取り組むことが極めて重要である。
近時の粉飾等の主な特徴としては、①粉飾等の期間の長期化(10年以上に及ぶ事例)、②金融機関毎に異なる決算書の作成、③事業実態の把握に必要な情報の非開示、④グループ会社を利用した複雑なスキームの構築、⑤不適切な会計処理等の組織的な実施、などが挙げられる。また、その主な手口としては、「資産・収益の架空計上」、「資産の過大見積・費用繰延」、「負債・費用の未計上」、「その他(循環取引等)」等が確認されている。
このような粉飾等に的確に対応するためには、金融機関において粉飾等の予兆を適時に把握することが重要となる。
金融庁が行ったモニタリングでは、多くの金融機関で自動アラートシステム等を導入し、チェックシートも活用しながら定量面・定性面ともに幅広くチェック項目を設定しているほか、Alを活用した先進的な取組が見られた一方、チェックが形骸化している事例も確認された。特に、ぶらさがり融資(非メイン融資)や越境融資では、経営者との面談や情報収集に対するインセンティブが低下しやすく、その結果、認識不足や思い込み等による与信管理の緩みが生じるリスクを内包している点に留意が必要である。
また、モニタリングの結果、対象先に共通する課題認識として、定量・定性の両面において異常や違和感を的確に察知できる能力を備えた人材の育成に加え、定性・定量チェック項目の妥当性・有効性等を継続的に検証・見直しし、その実効性を高めていく必要性が確認された。
これらの課題に対応するためには、信用リスク管理態勢全体の実効性を確保する観点から、粉飾等の予兆管理を含む信用リスク管理態勢の強化等に当たって、強固なガバナンス態勢の確立が不可欠であり、3ライン(第1線、第2線及び第3線)が有効に機能する仕組みの構築が求められる。そのためには、各ラインの役割を明確にするとともに、相互の連携を制度面と運用面の両面から確保することが重要である。

3)事例を題材にしたグループ検討
【参加者による発表】
- 各班共通して、財務数値の推移と事業実態との間に生じている「違和感」に注目していた。
- 原材料価格が高騰・変動しているにもかかわらず、営業利益率が毎月ほぼ一定で推移している点から、収益構造の不自然さが指摘された。
- 売掛金や棚卸資産が急増している点について、架空売上の計上や期末在庫の過大計上による利益操作の可能性が示された。
- 売上や利益が大幅に増加している一方で、人件費がほとんど増加していない点に着目し、実態を伴わない業績拡大ではないかとの疑念が挙げられた。
- 関連会社との取引比率が高い点や、グループ会社間で決算期がずれている点から、商流・資金流動の不透明さが指摘された。
- メインバンクが存在するにもかかわらず、新規取引金融機関に大型設備投資の相談を行っている点が違和感として示された。
- 金融機関側の管理面から、県外工場建設の実態把握の難しさが指摘された。
【講師による講評】
- 定量情報と定性情報を組み合わせ、粉飾等の予兆を多角的に捉えようとする姿勢が各所に見られた。
- 売掛金や棚卸資産といった勘定科目の検証にあたり、利益率や人件費、現預金等との整合性を確認しようとした視点は重要であり、実務的にも有意義である。
- 関係会社取引やグループ全体の資金循環に着目した点は、連結ベースでの実態を把握しようとする重要な観点である。
- 連結ベースでの決算分析や事業展開の背景・妥当性等を検証する必要性が意識されていた。
- メインバンクとの関係性や新規取引金融機関への融資相談理由など、数値に現れにくいリスクを捉えようとする視点は重要である。
- 「違和感」を起点とした具体的な確認行動や対話を行っていくことが、実効性のある信用リスク管理につながる。

4)講評(新潟県信用保証協会保証推進部児玉副部長)
信用保証協会には、申込みの都度、各金融機関から同一時点の決算書(同一取引先)が提出される。その中で、稀に金融機関ごとに内容の異なる決算書が確認されることがある。合計金額自体は合っているものの、内訳が異なっている事例もある。
こうした事例は、過去から継続して行われていたことが多く、実態解明に時間を要する傾向がある。万が一、そのような事例が確認された場合には、保証協会としても早期解決・早期改善を目指して対応していきたいと考えている。ついては、金融機関の皆様にもご協力をお願いしたい。
5)講評(全国信用協同組合連合会新潟支店山口支店長)
足元では、県内の倒産件数が大きく増加しており、今年1月に信用調査会社が発表したデータにおいては、倒産件数の増加のほか、廃業・休業の件数の増加も示されている。過去に管理業務に携わった経験上、突然の倒産が発生した場合、その影響は金融機関だけに留まらず、取引先や従業員、その家族、さらには地域全体にまで影響が及んでいる。こうした中で、地域に根差した信用金庫、信用組合の役割は極めて重要であると認識している。本日の勉強会を通じて、引き続き予兆管理や早期対応に取り組んでいただきたい。
また、予兆管理とは少し異なるが、事業承継や事業再生についても、今後ますます関係機関の連携が重要になってくる。地域金融機関向け監督指針において、融資残高が少ない先や保証協会付き融資であっても事業再生等への関与の必要性が示されており、非メイン融資先でも、他金融機関や保証協会、地域支援機関と連携しながら事業再生等に取り組んでいく姿勢が求められている。本日の勉強会を契機に、こうした連携をさらに深めていただきたい。
6)講評(新潟県信用組合協会小野澤会長)
足元では、物価高や賃上げが事業者の経営にとって大きな課題となっている。こうした中で、県内金融機関が中小・零細事業者に寄り添い、具体的な支援を行った34の成功事例(信用金庫18事例、信用組合16事例)が先日共有された。非常に素晴らしい事業者支援モデルであると考えている。
本日のように、県内の信用金庫・信用組合が一堂に会する機会は貴重であり、このような縁を大切にし、今後も業態の垣根を越えた情報交換を進めていただきたい。県内には多くの協同組織金融機関があり、今後も連携を深め、地域の中小・零細事業者のために力を合わせていきたい。
本日の勉強会では、金融機関として「性悪説」に立ち、粉飾等の未然防止・早期発見の体制を構築することの重要性を改めて認識した。組織として不正を許さない体制を整えることが、信頼を守る上で不可欠と考えている。
7)本会に参加しての感想
- 他金融機関の事例を広く知ることができ、知見が深まった。
- 外部環境が不安定で厳しい中、事業者の変化をいち早く察知できるよう情報感度を高めていくことの重要性を改めて感じた。
- 事例を通して、定量、定性面での審査ポイントを知ることができた。
- 本部の部署であっても、営業店任せにするのではなく、現場の状況把握が重要と認識した。
- 普段接することの多い経営者の表情や従業員の様子、取引先の変化により、数字に表れる前に予見できる等、今回学んだことを日常業務に活かしていきたい。
本ページに関するお問い合わせ先
関東財務局新潟財務事務所理財課
TEL025-281-7504(直)

