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「高校生と先生のための北海道における金融教育シンポジウム」を開催しました(実施報告)

 2022年4月からの成年年齢の引き下げに伴い、金融・消費者犯罪被害防止に向けた教育が重要になることや、高校における新学習指導要領がスタートし、生涯を見通した生活設計のため、新たに「資産形成」の視点も触れられます。

 そこで、北海道において、金融経済教育・消費者教育を推進している関係機関が協働し、高校生と先生を対象にした「金融教育シンポジウム」を開催しました。

 また、今回のシンポジウムは、世界中の若者がお金について学ぶ「グローバルマネーウィーク(GMW)」の一環として開催し、北海道の高校生が学んでいる姿を世界へ発信しています。

開催概要

開催日時

2022年3月25日(金曜日)13時25分から16時50分

参加人数

  • 参加人数:約170名
  • 会場:札幌会場:31名、函館会場:11名、帯広会場:13名、オンライン:約115名
  • 参加者:高校生約60名、先生・一般約110名 

主催(共催)

財務省北海道財務局、北海道金融広報委員会、北海道、札幌証券取引所、日本証券業協会北海道地区協会、  

財務省函館財務事務所、財務省帯広財務事務所

シンポジウムの模様

北海道財務局長 明瀬 光司による 開会挨拶の様子
北海道財務局長 明瀬 光司より 開会挨拶

オープニング・リマークス

 

 シンポジウム開会にあたり、主催者を代表して、

 財務省北海道財務局長 明瀬 光司より、「金融・経済について理解し、お金の知識を身に付けることは、個々人の目標の実現のほか、豊かな社会を創り、実現するための手段の一つ。

 金融知識を身に付けることで、明るい未来を切り開けると確信しています」との開会の挨拶がありました。

 

 

 

 

 

 

第1部 基調講演の模様

 

杉村太蔵氏による基調講演の様子
杉村太蔵氏が学生と対話する様子
杉村太蔵氏より 基調講演

 「お金について考えてみよう!タイゾーの金融経済超入門~生きる力、自立する力を高めるために~」と題して、元衆議院議員の杉村 太蔵 氏より基調講演を行って頂きました。

 
 講演では、18歳へ成年年齢が引き下げとなり、親の同意なしにクレジットカードが作れるなど様々な制約がなくなるが、その一方で、よく考え、行動することが重要であるとし、「お金とうまく付き合うには、本当に今必要なのかを考える『理性』と、金額は妥当で、購入することで自分のためになるのかを考える『感性』の両方を磨くことが大切」と話されました。

 

 また、投資を受ける側からビジネスを考えると、「売り手、買い手だけではなく、社会が良くなるといった視点も重要で、今後、資産形成として投資を行う際には、社会の問題が解決され、社会が良くなるかといった観点でもしっかりと会社を見て欲しい」と話されました。

 

 高校生からは、「杉村さんのお話はとてもよく頭に入ってきて、基本からしっかり理解することができてよかった」、「投資とは、ただ株を買って、儲けるといった意味以外にも、その地域の住民や企業など様々な分野に影響を与えることを理解できた」、先生からは、「講師の熱い思いが、高校生だけでなく、大人の私にも響きました。今日から理性と感性を磨いていくための行動をします」といった感想が聞かれました。

 

 

第2部 資産形成体験ゲームの模様

 

 高校生に、より主体的に、金融や経済を学んでもらうことを目的として、架空の企業への模擬投資を行うシミュレーションゲームを実施しました。

 ゲームでは、為替の変動、新商品の開発、原材料価格の高騰、不適切な内部管理体制、カーボンニュートラルへの対応、オリンピックの開催、サイバー攻撃など、様々なイベントが発生。

 参加者は、それぞれ4名程度のチームに分かれて議論を行い、投資先・資産配分を決定していきます。  

 

 3つのイベントを踏まえ、13チームの投資結果は、元本3万円のところ、資産残高33,750円から48,000円となり、全チームとも資産を増やして終えることができました。

 各イベントとそれに基づく株価は、単純化されたストーリーに基づくものであり、現実は、外部環境の変化、会社の内部要因など、複雑に絡み合いながら決まっていきます。

 このゲームで重要なことは、結果ではなく、参加者の高校生が、様々な経済事象について考え、他の高校生の意見を聞き、投資先、投資額を決定するというプロセスにあります。

 

札幌会場のグループワークの様子(ゴマフアザラシチーム)   札幌会場のグループワークの様子(ホッキョクグマチーム)
札幌会場のグループワークの様子

 優勝した帯広会場のオオワシさんチームは、「1点買いという大きな勝負に出るのではなく、複数の株式に分散投資を図り、安定した投資行動をとったことが勝因」と発表していました。

 

 各チームには、財務局の若手職員がファシリテーターとして入り、高校生によるグループワークが円滑に進行するためのサポートをしました。

 高校生からは、「外国人観光客の減少や原材料価格の高騰等で苦しい状況に立たされているが、有名ユーチューバーを抜擢した広告戦略、新商品開発、環境面を踏まえたプラスチックから紙へのパッケージ変更など前向きな経営姿勢を応援したいので、ここへ投資する」という発言がありました。

 担当したファシリテーターからは、「どこの株価が上がるか下がるかといった短期的な視点だけではなく、各イベントから、会社の経営方針を読み取って、投資戦略を考えていた視点は素晴らしかった」との声がありました。

 

函館会場のグループワークの様子 帯広会場のグループワークの様子
函館会場のグループワークの様子 帯広会場のグループワークの様子

 

 ゲームを振り返り、主催者より講評を行いました。

 札幌証券取引所 鳥居専務理事からは、「熱心に討議されていた。どのような要素によって、株価が変動するのか、感じれたのではないか。経済・金融の知識を深め、未来につながる資産形成を図っていただきたい」とエールが送られました。

 また、財務省北海道財務局 宇根金融商品取引所監理官からは、「投資は、資産形成だけではなく、投資されたお金が、企業に回り、企業の活動を通じて社会に還元されていくという大きな回路である。ぜひ、皆様にもその回路に参加してもらいたい。その際には、しっかりとリスク・リターンの関係を頭入れて欲しい」と話がありました。

 

札幌証券取引所 鳥居専務理事からの講評の様子 北海道財務局  宇根金融商品取引所監理官からの講評の様子
札幌証券取引所 鳥居専務理事からの講評

北海道財務局

宇根金融商品取引所監理官からの講評

 

 参加した高校生からは、「ハイリターンを求めると、ハイリスクが伴う事が良く理解出来ました。現実は国際情勢など、様々な事を加味する必要があると感じました」、「社会や経済の動きをよく調べて、判断することが大事であることがわかった」との声が聞かれました。

 

 高校生のグループワークを見学された先生からは、「体験ゲームの内容はとても参考になりました。授業でも応用できそう」、「このような体験型のゲームを教室で進められると、子供たちの印象に残り、お金や将来について考える良いきっかけになる」との感想が聞かれました。

 

オンラインでのグループワークの様子        オンライングループワークのPC画面の様子
オンラインでのグループワークの様子


第3部 パネルディスカッションの模様

 

 パネルディスカッションでは、「金融経済教育・消費者教育の現状と課題」をテーマに、札幌学院大学 経済経営学部 教授 橋長 真紀子 氏による進行のもと、北海道立消費生活センター 教育啓発部長 斎藤 清美 氏、北海道高等学校遠隔授業配信センター 教諭 佐藤 豊記 氏、北星学園大学文学部 教授 鳴海 昌江 氏の間で、意見が交わされました。

 

テーマ1 成年年齢の引き下げに伴い、高校生にどのような危険が生じるか。また、その危険を回避するためには、どのような教育が必要か。

 

 斎藤 氏からは、未成年である「18歳・19歳」と、成年の「20歳から22歳」とでは、後者は契約購入金額が高額になることで、消費相談の内容が大きく変わる。

 また、先輩からの勧誘で、簡単に売買契約などを行ってしまう。成年年齢が引き下がった場合、正しい金融知識を身に付け、この話は大丈夫なのかとしっかり想像する視点が大事といったお話がありました。

 

 佐藤 氏からは、公民科、家庭科との教科間連携が重要であることや、外部機関から講師を招いて専門的な話を行ってもらうなど、複数の視点で重層的に伝えていくことが重要とのお話がありました。

 また、成年年齢の引き下げは、負の側面だけでなく、様々な環境に置かれた若者が自分の力で自立していく救いにもなっていく。教師がしっかりとサポートができるかが重要とのお話がありました。

 

 鳴海 氏からは、高校3年生は、まだ子供という一方、年度内には、成年年齢に達する。十分な知識や判断力がないまま、安易な消費契約をすると、そこには、様々な危険が予想され、場合によっては過重な債務を背負ってしまうことも懸念される。早い段階から、金融や消費生活について、体験的な教材などを通じて、自分ごととして、生きた知識を身に付けさせ、賢明な判断、行動につなげていくことが大切だとのお話がありました。

 

パネルディスカッションの様子 パネリスト 北海道立消費生活センター  斎藤部長からの発言の様子
パネルディスカッションの様子

パネリスト 北海道立消費生活センター

斎藤部長からの発言

 

テーマ2 「消費者市民社会」を担っていく高校生になるためにどのような教育が必要か。高校生が、主体的に、消費生活を通じて、持続可能な社会の形成に貢献することが重要であり、責任を持った消費や金銭の使い方が求められる。その際、どのような教育が必要か。

 

 斎藤 氏からは、商品やサービスを買うということは、その企業に自分のお金で一票を投じるという行為をしている。正しい知識を身に付け、どのように、大切なお金を使うかをよく考えることが重要とのお話がありました。

 

 佐藤 氏からは、様々な問題に対して、高校生は大人より純粋で真面目に考えるが、大人たちも誠実に考えていくなど、消費者市民社会を構築し、担っていく覚悟が大切。そのために、消費者問題、金融教育を高校生と一緒に考えていく仕組みを作ることが重要とのお話がありました。

 

 鳴海 氏からは、お金という視点で人生を賢く生きるための学びが体系化されていないことが大きな課題。また、教師側も金融関連の教育を受ける機会がなかったこともあり、学校だけで対応し解決するのではなく、知識やノウハウを有する金融の専門家との連携等が必要とのお話がありました。

 

パネリスト 北海道高等学校遠隔授業配信センター  佐藤 教諭からの発言の様子 パネリスト 北星学園大学 鳴海教授からの発言の様子

パネリスト 北海道高等学校遠隔授業配信センター

佐藤 教諭からの発言

パネリスト 北星学園大学 鳴海教授からの発言

 

コーディネーター 札幌学院大学  橋長教授からの発言の様子

コーディネーター 札幌学院大学

橋長教授からの発言

 最後に、橋長 氏から、お金は自分の夢を叶えるための道具であって、それをうまく活用するのも、お金におぼれてしまうのも、本人次第。自分のライフプランをしっかりと考えたうえで、自分のお金をどのように役立てていくのかを考えることが重要。

 

 また、お金の使い方には、現在の自分を豊かにする消費と、将来の消費のために蓄えておく投資がある。将来、自分がどんな世界で生活をしたいのか、自分の住む社会や環境も含め、自分の夢を追求するお金の使い方もある。

 

 広い視点で、金融というものを先生方の授業の中に組み込んでいただけると、金融が接点となり、各教科間でつながりが生まれ、さらに効果的な金融教育になっていくことを期待しますとのメッセージでまとめていただきました。

 

 

クロージング・リマークス

 

北海道金融広報委員会副会長・日本銀行  札幌支店長 石井正信 氏より 閉会挨拶の様子

北海道金融広報委員会副会長・日本銀行

札幌支店長 石井正信 氏より 閉会挨拶

 シンポジウム閉会にあたり、主催者を代表して、北海道金融広報委員会副会長・日本銀行札幌支店長 石井 正信 氏より、参加者・登壇者への御礼の言葉を申し上げるとともに、「金融教育とは、お金儲けを教えるものではなく、また、難しい金融の知識を生徒に無理やり理解させようとするものではない。お金を通じて、自分のこと、将来のことをしっかりと考える態度を養うことに主眼がある。

 共同主催の各機関では、金融教育をサポートする仕組みを用意しているので、ご相談いただきたい。高校生の皆様には、金融知識を身に付け、輝く未来を切り開いていただきたい」との閉会の挨拶がありました。

 

 

 

 

 

グローバルマネーウィーク (SNSで北海道から世界へ発信)

 

 今回の取り組みについて、ハッシュタグ「#GlobalMoneyWeek2022」を付けてSNSで、全世界へ発信しました。

 

高校生の皆さんと記念撮影する様子 高校生と杉村太蔵氏の記念撮影の様子 高校生の皆さんとファシリテーターが記念撮影する様子

SNS投稿写真 (高校生の皆さんと記念撮影)

 

               グローバルマネーウィーク ロゴ

グローバルマネーウィーク(Global Money Week)は、2012年から始まった子供・若者に対する金融教育・金融包摂の推進のための国際的な啓発活動です。

2022年3月21日から27日までの一週間、世界各国の様々な団体が、子供・若者向けの金融教育を推進するイベントを行いました。

 

 

本ページに関するお問い合わせ先

財務省 北海道財務局 理財部 金融監督第一課

電話番号 011-709-2311(内線4352)

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