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「青函地域経済活性化フォーラム(第5回)」を開催しました

 当局では、これまで平成27年11月、28年5月、29年6月、30年5月の4回にわたり、北海道新幹線開業を契機とした青函地域の活性化や持続的発展に向けた取組み、課題認識等について情報共有を行い、青函関係者間の地域経済エコシステム(※)を構築してまいりました。
 今般、これまでのフォーラムで共有した課題等を更に掘り下げて議論し、地域経済エコシステム内の一層の協力関係を構築することを目的として、北斗市において「青函地域経済活性化フォーラム(第5回)」を開催しました。

1.開催日時

令和元年5月28日(火曜日) 13時50分から16時15分まで

2.会場

北斗市総合文化センター かなでーる

3.主催

北海道財務局函館財務事務所、東北財務局青森財務事務所

4.出席者(順不同)

(1)地方公共団体

北海道(渡島総合振興局)、函館市、北斗市、木古内町、青森県、青森市

(2)経済団体等

函館商工会議所、北海道商工会連合会、北斗市商工会、青森県商工会議所連合会、青森県商工会連合会

(3)金融機関

(株)北海道銀行、(株)北洋銀行、渡島信用金庫、道南うみ街信用金庫、函館商工信用組合、(株)青森銀行、(株)みちのく銀行、(株)日本政策投資銀行、(株)日本政策金融公庫

(4)関係機関

津軽海峡フェリー(株)、函館バス(株)、函館財務事務所財務行政アドバイザー、(公社)青森県観光連盟、共栄運輸(株)(青函フェリー)、(一財)青森地域社会研究所、青森大学、函館運輸支局、東北運輸局、青森運輸支局

5.内容(テーマ)

青函立体観光の活性化について~観光客の利便性向上等に向けて~

6.結果概要

(1)北海道運輸局函館運輸支局からの発表

テーマ:「インバウンド観光の現状と動向」「新たな決済手法の導入に向けた実証事業」
発表者:北海道運輸局函館運輸支局 首席運輸企画専門官 呉憲一郎氏
 
  • 日本の総人口が減少するなか、定住人口1人当たりの年間消費額(125万円)は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者8人分、国内旅行者(宿泊)25人分、国内旅行者(日帰り)81人分に相当する。
  • 訪日外国人旅行者数(全国)で、2018年には約3,119万人となり、順調に伸びている。内訳で見ると、中国(838万人)、韓国(754万人)、台湾(476万人)と続き、アジアだけで84.5%を占めている。
  • 訪日外国人旅行者数の増加要因としては、ビザ緩和、消費税免税制度の拡充、受入環境整備(多言語表記等)等が考えられる。
  • 訪日外国人旅行者の旅行中に困ったことについては、多言語案内・コミュニケーションに関するものやキャッシュレス決済環境に関するものが上位を占めている。
  • 小樽市の47店舗が参画したキャッシュレス決済導入の実証実験では、客単価(中国人旅行者)が平均1.5倍増加する等の効果があった。
  • 登別駅から登別温泉、洞爺駅から洞爺湖温泉の2路線で実施したバス運賃に対するキャッシュレス決済導入の実証実験では、乗車賃支払いに伴うトラブルが軽減されたとバス運転手にも好評であった。なお、実験終了後、当該2路線については、引き続きキャッシュレス決済が継続されている。

(2)青森大学からの発表

テーマ:「青函交流の可能性と課題~他の新幹線地域との比較から~」
発表者:青森大学 社会学部 教授 櫛引素夫氏
 
  • 北海道新幹線は九州新幹線や北陸新幹線とよく比較されるが、その違いとして、九州新幹線は人口密度が高い都市に沿線しているのに対し、北海道新幹線の沿線の人口密度は低く、また先細りである。また、北陸新幹線は産業拠点を経由しているのに対し、北海道新幹線にはそういった拠点が少ない。
  • 新幹線の効果とその開業効果の違いは、開業効果が一過性であるのに対し、新幹線の効果は開業を契機として発生し、一過性に留まらせず、「もの・こと・地域をバージョンアップ」することである。
  • インバウンド誘客は手段であり目的ではない。目的は持続可能な地域作りにある。
  • 開業効果が落ち着いたことで、新幹線効果が終わったと考えることは適切ではなく、持続可能な地域をどう作っていくか、今後の青函ストーリーを再構築することが重要である。

(3)津軽海峡フェリー(株)からの発表

テーマ:「受け入れ環境の整備と取り組み事例」
発表者:津軽海峡フェリー(株) 社長室長 高橋俊介氏
 
  • バス・タクシー等の二次交通の拡充や、QRコードでのスマートチェックインの導入等により顧客の利便性を図っている。
  • 鉄道やレンタカーとセットになったお得な企画切符の販売により、顧客に多様な旅行スタイルを提供。
  • インバウンドの乗車実績は、全体の約4%程だが、個人手配客(FIT)は前年比で30%増加している。
  • インバウンド誘客の取組みとして、サイクリングツアーを企画。サイクリングだから体験できる地域の魅力を通じて、周遊観光のPRと定番化を狙う。
  • サイクリングツアーについては、2016から2018年の三ヵ年で、台湾、香港、マカオ等から62名の利用実績があり、団体旅行では通過される小規模な施設も利用される等の経済効果が見られた。

(4)(公社)青森県観光連盟からの発表

テーマ:「観光による青函連携」
発表者:(公社)青森県観光連盟 専務理事 高坂幹氏
 
  • インバウンド宿泊数でみると、青森県は全国トップの伸び率である。平成22年と比較すると490.3%の伸び率を記録。
  • 北海道新幹線開業を契機に、平成28年7月から9月、青森県・函館デスティネーションキャンペーンを実施した。今年の7月から9月にはJR東日本・JR北海道と連携し新たな青函観光キャンペーンを実施する。これには、世界遺産登録を目指している縄文遺跡群をキラーコンテンツに国内外から多くの集客を目指している。
  • 多様な移動手段があり、新幹線とフェリーを組み合わせ、青森、函館だけでなく、下北にも行っていただき、青函地域における周遊が活発になることに期待。
  • 青函広域観光圏を形成しブランド化することが重要。そのためには、ICTを活用した広域観光プラットフォーラムの形成等を図り、将来的には東北・北海道の広域周遊ルートを構築する。
  • 地域の魅力を高める観光コンテンツの開発が急務のため、連盟内に観光開発チームを設立し、2018年7月から現在までで計39の新たな観光プランを創出した。
  • アスパムでは、昨年11月から4か国語で対応可能な青森県観光AIコンシェルジュサービスを開始しており、今年4月までに約12,000件の利用実績があった。
  • インバウンド受入体制強化として、キャッシュレス決済環境を整備。

(5)函館バス(株)からの発表

テーマ:「青函地域の交流とインバウンド対応」
発表者:函館バス(株) 営業課 係長 渡部十月哉氏
 
  • 北海道新幹線開業に伴い、二次交通の充実を図るため、新函館北斗駅への乗り入れ路線を拡充。また、フェリーでの来函者が増えていることから、津軽海峡フェリー前を経由する路線についても拡充。
  • インバウンド対応として、全道各地の路線バスや高速バスが利用できる「バジェットバスパス」を導入。
  • 平成19年より導入したバスの接近情報を知らせるバスロケーションシステムを刷新。インバウンド対応として接近情報等の英語表記を可能としたほか、位置情報精度の向上やスマホ対応、乗換案内を新設した。
  • 平成29年3月のICカード導入から1年間で、ICカード利用率は約70%に達した。全国相互利用可能な10カードの内訳でみると、地元カードのnimocaが全体の8割程を占めるが、インバウンドでは鉄道系ICカードの利用も多い。

(6)(株)日本政策投資銀行青森事務所からの発表

テーマ:「「インバウンド意向調査」にみる青函立体観光活性化への期待」
発表者:(株)日本政策投資銀行 青森事務所長 柏原滋氏
 
  • アジア8地域、欧米豪4地域に在住する海外旅行経験者を対象に行った「2018 東北インバウンド意向調査」では、函館・青森の認知度は主要観光地(東京・大阪・京都等)との比較ではやや低位ながら、東北の各地域と比較すると高い。また、訪問意欲については、認知度が低いことから低位であるが、東北県内で青森が最も高い結果(5.5%)となり、函館はそれを上回る結果(8.7%)となった。
  • 同調査での「東北」への再訪希望率は61.6%と、前年調査比では改善しているものの、相対的にみれば依然低位である。
  • 東北訪問経験者は、二次交通への不満や、キャッシュレス決済等受入体制に関する不満が、他地域訪問経験者の同項目の不満に比べると高く、今後受入体制の整備を図っていくことが重要である。
  • 二次交通の対応策として、伊豆エリアではJR東日本等が、二次交通をスマートフォンで検索・予約・決済し目的地までシームレスに移動できる二次交通統合型サービス「観光型MaaS」の実証実験を行っており、青函地域でも同様な取り組みが広がれば、二次交通の利便性や周遊効果の向上に繋がると期待される。
  • 瀬戸内地域で設立されたせとうちDMOでは、滞在型クルージングリゾートエリアの形成や地域産品のブランド化等の取り組みを行った。青函地域においても、観光に関するマネジメントについて、これまで以上に産学官金が連携を強化し、青函観光圏のブランド化やプロモーションを行っていくことを期待する。
  • せとうちDMOの機能のひとつとして「せとうち観光活性化ファンド(総額約100億円規模)」があり、観光関連事業者に対し、多言語対応などのインバウンド対応や食材・産品のブランド化など資金面からサポートしている。

(7)意見交換(主な意見)

1.案内板・HP等の多言語化について

 

津軽海峡フェリー(株)

  • 東北運輸局の事業でタブレットを導入し、翻訳ソフトを活用した窓口案内を行っている。しかしながら、掲示物に関しては、それほど多言語表記を進められていない。


函館バス(株)

  • バスロケーションシステムやHPについては、英語での多言語表記を対応済み。駅前の案内所等の掲示物についても英語での多言語表記は対応済みであるが、それ以外の言語については対応できていない。
  • 窓口には英語や中国語を話せる職員を配置している。


函館市

  • 観光サイトは7か国語(英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語・マレーシア語・タイ語・インドネシア語)で対応。

 

青森県

  • 観光サイトは4か国語(英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語)で対応。そのほかフェイスブックについては、英語・繁体字(香港向け、台湾向け)・韓国語・タイ語で対応している。中国大陸向けには微博・微信で発信している。
 

2.キャッシュレス決済について


函館バス(株)
  • 個人手配客の増加により路線バスに乗車する旅行客が増えており、ICカード利用率は今後も増加することが見込まれる。

木古内町(みそぎの郷きこない)
  • QRコード決済の導入を検討している。インバウンドのキャッシュレス決済については、いろんな場で議論されているが、実際道の駅で利用しているという観光客はあまりいない。

(公社)青森県観光連盟
  • キャッシュレス決済により、インバウンドの客単価が増加していることを実感している。以前は、最後に残った日本のコインで購入できる数量しか買い物をしなかったが、キャッシュレス決済導入により金額を気にすることがなくなった。

函館商工会議所
  • キャッシュレス決済の導入について、元々手数料や導入コストの高さ、現金化までの期間の長さが弊害と言われてきたが、地方にはその弊害のほか、更に3つの弊害がある。まず一つ目が、情報の多さ。キャッシュレス決済事業者、金融機関等から営業セールスがあるが、どの決済業者を選べばいいのかわからないという悩みを聞く。二つ目が、従業員教育。三つ目が、オーナーの高齢化。後継者がいない事業者だと設備投資に消極的になる。その、弊害を取り除くためにも、地元金融機関が決済事業者と提携し、地域で事業者をサポートする体制作りが重要である。
 

3.北海道新幹線の札幌延伸について


青森大学
  • 札幌延伸まであと12年という中、そもそも12年後という長期スパンで物事を考えるという仕組みがない。長期スパンが難しいのであれば、3,4年の短期スパンのサイクルの積み重ねでも構わないので、北海道新幹線延伸に合せて仕組みを構築していくぐらいでの意気込みでやっていく必要がある。
 

4.二次交通について


共栄運輸(株)(青函フェリー)
  • 当社は、近年旅客フェリーにも力を入れており、二次交通の整備が課題で自助努力として、函館市・青森市の各バス会社への誘致折衝を進めてきたが、フェリー会社とバス会社だけではない、更なる青函圏活性化・利便性向上のために、もう少し大きな枠組みで考える必要があるのではと感じている。

(株)日本政策投資銀行
  • 伊豆エリアで展開されている観光型MaaSの導入が解決策の一つとして考えられる。また、MaaSの導入にあたり、全体として経済的な料金設定をする等の研究が必要。

函館商工会議所
  • MaaSもキャッシュレス決済も現在乱立している状態あり、また、使い勝手があまりよくないという利用者の声も聞こえてくる。今後の動向を注視しながら、青函エリア全体でMaaSを推進していく情報共有の仕組みを考えていく必要がある。

 

フォーラム全体

函館運輸支局発表

青森県観光連盟発表

意見交換進行

意見交換の様子(1)

意見交換の様子(2)

本ページに関するお問い合わせ先

東北財務局青森財務事務所総務課
電話:017-722-1461(内線211,240)

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