地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー
最終更新日:2024年3月22日
大阪信用金庫 理事長 髙井 嘉津義
取引先に寄り添う「この街のホームドクター」として、エコアクション21等を通じた脱炭素支援を推進されている、大阪信用金庫 髙井 嘉津義 理事長に、脱炭素に関する取組方針や支援策等について伺いました。
始まりは取引先の経費を削減させたいという想いから
ー 脱炭素の取組を行うことになったきっかけや取組方針についてお聞かせください。
2010年代、まだSDGsや脱炭素などの取組が盛んでなかった頃、私はCSR推進部の次長をしていました。支店から淡々と上がってくる電気やガソリンの使用量報告を、もっと職員に意識してもらうにはどうしたら良いかを考えていました。また、取引先が人件費や材料費の高騰に喘ぐなか、今でこそ価格転嫁と言われていますが、当時は専ら経費の削減で凌ぐしかなく、取引先の経費を削減できる方法も探していました。
その時に辿り着いたのがエコアクション21(環境省の認証制度)です。取引先にとっては、認証を受ける過程で経費削減の具体的な方法を知ることができ、さらには会社のブランド化や優位性にも貢献できるのではないかと。そしてこのエコアクション21を取引先に勧めるには、まずは自分達が率先的に取得して知識を得ることで意識を持つ必要があると、そう考えたわけです。
当時の理事長にこれを提案したところ、当初は「儲けにならない」と一蹴されましたが、それでも折れずに繰り返し相談したところ、「それならやってみなさい」と言われました。この一言が、当金庫が脱炭素に取り組むきっかけとなりました。
「エコアクショナー」が中心となって、取引先の課題を解消
ー 現在注力している、取引先や地域に対する脱炭素支援策についてお聞かせください。
当金庫は、2010年にエコアクション21の認証を受け、今日に至るまでこの認証を継続して取得している実績がありますので、これまでに培った知識と実績を武器にして、説得力を持って取引先に脱炭素の重要性を周知していきたいと思います。エコアクション21を取得し、脱炭素の取組を世の中に公表することで、新しいビジネスチャンスに繋がる可能性も出てきますし、取引先本体としても強くなっていく。そういったメリットをしっかりと伝えることが大事だと考えています。
また、職員間、あるいは取引先に対して脱炭素の意識を醸成する目的で、各支店の若手職員をエコアクショナーとして任命する制度を創設しています。このエコアクショナーを中心に、当金庫が主催する取引先向けのエコアクション21導入セミナーへの呼び掛けにも力を入れています。導入に至らない取引先の多くが、マンパワー不足や、具体的な作業が分からないことが原因となっていますので、我々が体制を補強しつつ、解決方法をアドバイスしています。
脱炭素の取組を含めた地域課題の解決に注力する職員の活動については、本部が支店から報告を受け、全店にニュースで発信しています。以前までの人事評価は、預金を取ってきたとか、融資の話を聞いてきて実行したとか、全てが実行ベースでしたが、そのような評価の仕方は止めました。職員の個性を生かし、地域課題に向き合うために、中小企業や地域で困っている人の役に立った話など、職員皆が読んで良いなと思うストーリーを評価して表彰をしたり、人事評価にインセンティブを付けるなど、職員のモチベーション向上にも努めています。
「自主創造」の理念のもと、気付きを大切にして、全員で考え実行する
ー 職員の皆様に対して、期待を込めたメッセージをお願いします。
取引先の脱炭素を支援する前提として、まずは自らの職場の脱炭素についてもっと考えてもらいたいと思います。各支店にエコアクション21を取得してもらっていますが、CO₂排出量をどれだけ減らすのかだけでなく、どのように減らすのか、どう改善していくのかを意識しながら、エコアクショナーだけに任せるのではなく、職員皆で考えて実行していくということが重要です。
そして、その取組や結果を取引先にもフィードバックしてください。自らの経験無くして取引先に説明することはできませんので、窓口係も役席も皆が同じベクトルで考えて取り組んでもらいたいと思います。
また、本部からの指示を待つのではなく、支店の皆で考えた「地域や取引先に合った役に立てること」を実行に移してください。「自主創造」の理念のもと、各支店で地域に求められていることは何かを考え、そこで出た気付きを大切にしてもらいたいと思います。
一人一人の活動が他の職員の気付きに繋がる、連鎖反応に期待しています。
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