地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー
最終更新日:2024年3月22日
株式会社 みなと銀行 代表取締役社長 武市 寿一
兵庫県にコミットし、県民銀行として、行政とも連携しながら脱炭素への取組を進めている、株式会社 みなと銀行 武市 寿一 代表取締役社長に、脱炭素に関する取組方針や支援策等について伺いました。
みなと銀行単体で10年間8,000億円のリテール・トランジション・ファイナンスを
ー 脱炭素の取組を行うことになったきっかけや取組方針についてお聞かせください。
兵庫県は製造業が多いこともあり、これまでもSDGsに関する取組については、県と連携しながら進めてきましたが、当社として脱炭素に対する取組を始めたきっかけは、りそなグループでカーボンニュートラルに関する2つの長期目標を掲げたことです。
1つは、当グループにおけるカーボンニュートラル目標で、電力の再エネ化を推進してCO₂排出量を2030年度までに実質ゼロにするというものです。もう1つは、リテール・トランジション・ファイナンス目標を設定しており、2021年度から2030年度までの累計取扱高について、りそなグループ全体で10兆円、みなと銀行単体で約8,000億円を目指しています。
スタートしてから2年で1,000億円ほどの実績となっていますので、これまでは着実に取組を進めてこられましたが、これからはどう取り組むべきか悩んでいるお客さまに対して如何に後押ししていくかが重要になってきます。地域や脱炭素にコミットした姿を見せながら、行政の動きとも連動した取組を進めていきたいと考えています。具体的には、兵庫県ではSDGsに取り組む事業者への認証制度がありますので、そちらの認証を受けた事業者へのインセンティブに繋がるような取組が金融機関として進められればと考えています。
サプライチェーンからの要請、経済合理性、ブランド力の向上、の3つの視点でお客さまにアプローチする
ー 現在注力している、お客さまや地域に対する脱炭素支援策についてお聞かせください。
当社では、取組をより効果的に進めるために、お客さまへのアプローチをサプライチェーンからの要請、経済合理性、ブランド力の向上、の3つの視点で整理しています。
例えば、サプライチェーンから取り残されないためには何が必要かを県内の代表的な製造業のお客さまと一緒に考えるセミナーの開催、経済合理性に繋がる省エネ支援サービスを提供できる提携先の紹介や補助金申請のサポートに取り組んでいる他、脱炭素に取り組むお客さまと学生との就職マッチングなど、お客さまのブランド力の向上が採用活動に繋がる仕組みの検討などを進めています。
他方で、脱炭素関連のサービスについては、正直まだお客さまからのニーズはあまり強くないのが現状です。特に当社の現場従業員からすると、当社の方針は「建前」に聞こえ、お客さまの言っていることの方が現実に感じるというのが「本音」なんだろうなと思います。当社としても、従業員が腹落ちしないことをいくら強制しようとしても意味がありません。ですので、この3つの視点で考えるということが、最終的にお客さまの利益にどう繋がるのかということを、我々は常に考えて従業員にも伝えていかなければならないと考えています。
俯瞰的な目線と現場目線を整合させ、5年後のお客さまの姿を考える
ー 従業員の皆さまに対して、期待を込めたメッセージをお願いします。
兵庫県に根差す当社の従業員である以上、県内全体の状況がどうなっているかという俯瞰的な目線と、取引の現場で実際に何が起こっているのかという現場目線を、しっかりと整合させながら、脱炭素の取組を進めてもらいたいと思います。
従業員自身が、国際動向も踏まえた広い視野で、ローカルに物事を捉える力を身に付けることも重要です。そうした視点で、「5年後のこの会社はどうなっているか」ということを予想し、脱炭素に取り組まないことによって、サプライチェーンの中で取り残されるようなことにならないよう、また、デメリットが生じないようにお客さまをどう支援していくかをバックキャストで考えていくことが必要です。
あるべき姿だけを言い続けてもすれ違うだけなので、どうすればお客さまが動いてくれるのかを考えながら、脱炭素に対する取組を粘り強く進めてもらいたいと思います。
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