ページ本文

「栃木県内信用金庫・信用組合の渉外担当者等による意見交換会(令和4事務年度 第2回)」を開催しました

 県内の中小・小規模事業者は、コロナ禍以降、ロシアのウクライナ侵略に端を発した原油・原材料価格高騰、世界的規模で発生している金融市場の不透明な状況等により一層厳しい経営環境に置かれており、事業者に対する金融機関による支援は今後も不可欠な状況です。

 こうした中、信用金庫・信用組合においては、若手職員、特に渉外担当職員の確保と育成が共通の課題となっており、各金融機関において工夫しながら人材育成の取組みを模索しているところです。

 宇都宮財務事務所は、そうした若手職員を直接指導する中堅クラスの職員を対象とした、「栃木県内信用金庫・信用組合の渉外担当者等による意見交換会」を令和5年5月19日に開催しました。今回は、金融庁が令和5年3月に公表した「業種別支援の着眼点」をテーマとした事業者支援の基本的な考え方や、後輩を指導する上での課題等について議論しました。

1.日時

 令和5年5月19日(金曜日) 13時15分から16時40分

2.場所

 栃木県自治会館 4階403会議室

3.参加者

 栃木県内の6信用金庫及び2信用組合の渉外担当者、
 日本政策金融公庫宇都宮支店職員、栃木県信用保証協会職員(計20名)

4.結果概要

(1)開会挨拶(宇都宮財務事務所長 星 肇)

宇都宮財務事務所長

 国内では新型コロナが5類の感染症へと移行したことに伴い、いよいよポストコロナのフェーズに入っていくと思われる。ただ、こうした中でも、足許では原材料価格の高騰に伴う物価上昇や半導体不足などが続いている。

 また、今年に入ってゼロゼロ融資の返済が本格化する中、県内の中小・小規模事業者からは、「売上が戻っても収益が確保できない」、「生産の回復が遅れている」といった声が聞かれる。

 一方、海外では金融機関の信用不安に関わるニュースが連日報道されており、今後も事業者にとって困難な局面が続くものと思われる。

 財務局・財務事務所としても、引き続き様々な支援機関と連携して金融機関の後押しをして参りたいと考えており、この数年、当事務所が実施してきた意見交換会では、事業者支援を行っていくための効率的な渉外活動や、具体的なケースを用いたより実践的な支援について意見交換を行うなど、継続して事業者支援をテーマに取り上げてきたところ。

 その点においては、今年の3月に金融庁から「業種別支援の着眼点」が公表されたことで、地域金融機関がノウハウを共有する取組みが一層促進されるものと期待しているが、本書はあくまでも事業者支援のヒントであり、これをどのように活かすかは事業者支援担当者の腕の見せ所と考える。

 そこで、本日は基調講演の講師として、「業種別支援の着眼点」の取りまとめを行った金融庁地域金融企画室の三鬼陽介補佐(中小企業基盤整備機構から出向中)に、本書の解説と企業支援の基本的な考え方をお話しいただくので、皆さんの今後の事業者支援活動に活かしていただきたい。

(2)基調講演(金融庁 監督局 銀行第二課 地域金融企画室 室長補佐 三鬼 陽介)

金融庁三鬼室長補佐

 

「業種別支援の着眼点」について

 

 本年3月30日に金融庁が公表した事業者支援ツールである「業種別支援の着眼点」について、同庁監督局銀行第二課地域金融企画室の三鬼陽介室長補佐から、「業種別支援の着眼点」を作成した背景や活用方法等について、ご講演いただきました。

 

【取りまとめの背景と活用にあたっての留意点】

  • これまで金融庁では、地域の関係者(金融機関や信用保証協会等)が連携して円滑に事業者支援を進めていくよう、金融機関等の現場職員が地域・組織・業態を超えて事業者支援のノウハウを共有するための取組みを支援してきたところ。具体的には、Web上に金融機関専用のプラットフォームを設置したほか、各地域へ事業者支援の有識者や実務者を紹介したりするなどして地域内でのノウハウ共有の取組みを後押ししてきた。
  • コロナや物価高は多数の事業者に影響するため、地域金融機関は、地域の事業者に対する経営改善の支援を効率的・効果的に進めていくことが期待される。このため、渉外担当の現場職員が支援に着手する際のポイントや業種ごとの特性に応じたノウハウを整理する取組みを行った。
  • 比較的現場経験の浅い職員の方でも分かりやすい分量になるよう留意した。よって、本書にかかれていることは全てではなく、用途に応じて各組織、個人なりの着眼点を追加するなどの工夫を加えながら活用してほしい。

【本書の内容と支援のポイント】

  • 本書は、コンセプト・ユースケース、全業種共通の着眼点、5つ(建設・飲食・小売・卸売・運送)の業態ごとの着眼点、実務家等の知見をまとめた「教えてノウハウ先生」及び用語集から成る。
  • 業種共通として、数値面で着目する点では、例えば、売上高総利益率がある。この率の業界平均値を参考にすることもあるが、実際には数字ではわからない個別の事情があることから、あくまで目安と捉えるのが妥当。
  • このほか、ROA(総資産利益率)という指標もあるが、指標(計算式)を分解した上で、その業種が売上高に対する利益(売上高対利益率)を軸足としているのか、総資産に対する売上高(総資産回転率)を軸足としているのかを理解する必要がある。また、数値以外の面では、特にオーナー社長やその事業者の業界・商売の特性等をきちんと理解することも重要。
  • 中小の飲食業・小売業は大手・全国チェーンと正面から対抗するのは非常に難しいところもあるので、大手の規模感を冷静に捉えた上で、どこで差別化していけるかを考える必要がある。また、商圏のイメージを普段から持っておくことも大切。
  • 飲食業においては、「材料費+人件費の割合(FL比率)」が売上高に対して6割程度であることを適正値の一つの目安とする。また、客単価や一度に注文を受けられる数、店舗面積や客席数といった要素も把握したうえで売上目標を作る必要がある。
  • 小売業では資産をどれだけ効率的に売上に結びつけられているかという点で、総資本回転率は重要な指標。一方で、利益もまた重要ではあるものの、売上高に占める売上総利益(粗利)の割合は、売るモノ・売り方で大きく異なる。このため、業界平均は一つの目安にはなるが参考程度にとどめ、自社における3年程度の売上傾向をつかむことがより大切。
  • 在庫に対する支援の際には、単に余剰在庫が多いから削減すべきということではなく、売場面積・取扱アイテムを正確に把握した上で、現実的に実行可能な改善提案であることが大切。
  • 売上高の構成式(客数(入店客数×買上率)×客単価(平均買上点数×平均商品単価))をいつもイメージして、売上高の内訳を把握(推計でも可)できるようにしておいた方が良い。
  • このほか、数値以外で着目する点としては大手の量販店がどこまで細かなサービスを行っているのか調査した上で、差別化要素を検討していく必要がある。
  • 中小企業の社長はとにかく忙しいということを十分に理解した上で、企業へアプローチする際は、ニーズの正確な把握に努めることが大切。そのためには、支援する企業に興味を持ち相手の話をよく聞くコミュニケーションスキルを養うことも大切。
  • 本業支援に焦りや一方的な提案の押し付けは禁物。また、外部連携と言いつつ丸投げすることもNG。適切な継続関与が必要であり、無関心は信頼の失墜にもつながるため、常に相手に寄り添った対応を心がける。

 

【最後に】

 本書は数多ある着眼点の一つを示しているもの。ぜひ皆様でアレンジしながらオリジナルの着眼点を作り、実際の事業者支援に活用してもらえると良い。そして事業者にとって金融機関の皆様が、より一層身近で相談できる存在となることが大切と考える。

(3)グループディスカッション

 

 

 参加者が4つのグループに分かれ、「業種別支援の着眼点」を活用した飲食業、小売業の支援方法及び若手職員の育成に関するグループディスカッションを行いました。参加者からは、主に以下のような意見が挙げられました。

 

  • 飲食業者の支援として、食べることが最大の支援と考える。売上への貢献だけでなく、味や店の雰囲気等事業者のことをよく知り距離を縮めることが肝要。
  • 信用金庫の取引先では、しんきんコネクト等を利用してビジネスマッチングを行うことも可能であり、金融機関のリソースを活かした事業者支援を強化すべき。
  • 顧客への話の切り込み方が難しいという部下の悩みを聞くことがある。相手に話を聞いてもらうために業界や補助金に関する有益な情報を提供するようアドバイスしている。

 

グループディスカッションの様子2

グループディスカッションの様子1

 

 

(4)本会に参加しての感想(事後アンケートより)

  • 「業種別支援の着眼点」のポイントがわかりやすく、具体的な指標や目利きについて実際の業務に活かせる内容だった。
  • 1つ1つの事案に皆で取り組むことの重要性、議論には感性やアイデアが必要であると改めて認識した。
  • コロナ禍で企業側が求めている支援は、地域の情勢や補助金など、多岐にわたるという意見があり、融資や経営支援の知識だけでなく、様々な情報収集も重要だと感じた。

本ページに関するお問い合わせ先

関東財務局宇都宮財務事務所理財課

電話番号:028-346-6302

PDFファイルをご覧いただくにはAdobe Acrobat Reader(無償)が必要です。
ダウンロードした後インストールしてください。

Get Adobe Acrobat Reader