金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム(平成31年3月12日)の概要
開会挨拶
内閣府副大臣 田中 良生
基調講演
グローバル経済・金融の新たな動きとG20の役割~国際会議の舞台裏~
株式会社西日本シティ銀行 代表取締役会長 久保田 勇夫 氏
大蔵省(現財務省)で、国際金融局次長、関税局長など国際金融に携わられたご経験を踏まえ、国際会議の実態やその舞台裏、さらには、国際金融会議を主催する意義などについて講演頂いた。
株式会社西日本シティ銀行 代表取締役会長 久保田 勇夫 氏
大蔵省(現財務省)で、国際金融局次長、関税局長など国際金融に携わられたご経験を踏まえ、国際会議の実態やその舞台裏、さらには、国際金融会議を主催する意義などについて講演頂いた。
パネルディスカッション
九州北部のキャッシュレスに向けた取り組み~フィンテックの活用~
【iBankマーケティング株式会社 代表取締役社長 永吉 健一 氏】
- フィンテックについては、ポイントの1つは新しく生まれてくる技術とかテクノロジー、デジタルを、どう使って便利なサービスをつくっていくかというアプローチの点。もう1つは、銀行サービスがコモディティー化する中、お客様起点でのサービスが新しい技術で生まれているという点。
- キャッシュレス比率を上げようというとき、少し整理をしないといけないのは、何がキャッシュレスなのかというところと、それをどう推進していくのかという点。クレジットカードやデビットカード、振り込み、口座振替、引き落としもキャッシュレス。QRコード決済という観点でキャッシュレスを推進していくのであれば、そういった文脈で、提供側も使う側もあるいはお店側も整理していかなければならないのではないか。
【株式会社Origami 社長室ディレクター 桑原 智隆 氏】
- 金融も本質は、情報通信、情報産業。送金や金融サービスというものが、それ自体で、なかなか手数料もいただけなくなってくる中で、その周りで新しいサービスをユーザー目線でどうつくっていくか。日本はキャッシュレス後進国だとの意見もあるが、信頼される金融機関があって、現金が安心・安全に便利に流通。他方、デジタル変革の中で、世界の潮流に目を背けてはいけない。日本として、デジタルというものを使って、金融の分野をどう変えていけるか。フィンテックとは、こうした大きな取り組みの総称というふうに受けとめる。
- キャッシュレスは過去に3回波が来た。まず、60年代に、プラスチックのクレジットカードが出た時期。2回目は、2000年ごろに交通系ICに代表される非接触型のもの。今回は2015年ごろからのコード決済というのが3回目の波。これまで2回と大きく違う点は、ネット上で、決済が行われること。町の小さなお店で、ITに専門性がなくても、顧客接点を持てるということが新しい。
- QRコードを含め、キャッシュレス決済が浸透していくためには、身近な生活シーンでのお得や安心、便利さといった消費者にとっての経済合理性、また加盟店にとっての生産性向上、データの安全な活用による地域活性化など、生活での実感を通して受容性を高めていくことが必要。
- 大手企業などでは自社店舗の外でのお客様のニーズや挙動をつかみたいというデジタルマーケティングなどに関心が高い。一方、地元の和菓子屋さんや散髪屋さんといったところも地域の金融機関と一緒にキャッシュレスに取り組もうとしている。人手不足や生産性の問題もあるが、身の丈で、顧客のデータが自分の手元に残る中、再来店につなげたり、レジ前の物販を好調にするなど、どう売り上げを伸ばすかを考えることができ、経営者としての楽しさを増やしていける。そういったところもメリット。
- これまで、キャッスレスのニーズとコストがミスマッチしていた。端末の値段や加盟店手数料も、人手不足などに直面している地域ほど、高いコストを払わないといけなかった。そこに、新しい技術などで、むしろニーズの高い地域も導入コストを抑えながら導入できるようになった。新しい現実的なキャッシュレスの選択肢としての手段が備わってきた。そういったことを生かし、消費者と店舗に寄り添ったキャッシュレスの推進を、いろんな手段を組み合わせて行なっていくのではないか。
- キャッシュレス自体は、あくまで手段であり目的ではない。人口減少、地域活性化、データの利活用、生産性の向上など、社会課題の解決と経済成長までつなげていきたいというのが目的。QR決済の会社が乱立し、消費者も使いにくい状態となり、店舗もオペレーションが大変な状況で、例えば海外のプラットホームがキャンペーンで入ってきて、日本人の購買データも全て海外のサービス上で動くといったことには危機感を持っている。いろんなQR決済の会社が出てくる中でも、やっぱり便利で店舗側も簡便にできる、そういう世界観を連携してつくっていけたらと考える。
【株式会社西日本シティ銀行 執行役員営業企画部長 尾崎 健一 氏】
- キャッシュレスといっても、後払いのクレジット型、前払いの電子マネー型、即時払いのデビット型の大きく3つに分けられる。我が国のキャッシュレスの今後の予想を見てみると、QR決済の普及によって、電子マネー、銀行口座デビット型が今後拡大するとされているが、主流はクレジット型が今後も続くというふうに予想されている。当行では、利便性を向上させる取り組みの一つとして、QR決済サービスとのチャージ連携を進めている。
- 九州の外国人入国者数は、韓国、中国、台湾で88%を占めている。加盟店の多くは、こうしたインバウンドのキャッシュレスニーズに対応することで、売り上げの拡大が見込まれる。小売店あるいは飲食店で人手不足が深刻な問題になっており、キャッシュレスについては、こういった問題を解決する一つの手法であると考えられる。
- QR決済がキャッシュレスを席巻するような状況かどうかというのも、ちょっと疑問がある。そういう中で、私どもが取り組んでいるのは、例えば、一つの銀行がオリジナリティーも出しながら、やはり仕様が統一され、どこでもどの銀行でも使える、このようなサービスの方が、それぞれの銀行が加盟店を獲得し易く、共通化されたほうが圧倒的に利便性が高まると考える。
【株式会社親和銀行 執行役員営業推進部長 北川 隆幸 氏】
- フィンテックと言われるものがどんどん開発されて、我々の会社でもスマートフォン決済を進めている。ただ実際、進める中でいろんな壁にぶつかっている。何となくインバウンド先行で、キャッシュレスという言葉が地方を席巻してきているような気がしてならない。いわゆる地方銀行の使命として、キャッシュレス化を通じても経済活性化に貢献できるのだろうが、やはり我々地域金融機関の強みは、きめ細かい店舗ネットワークであったり、フェイス・トゥ・フェイスということで対応できることであろうと認識している。
- 長崎県というのは、離島を含めて、国内旅行者とか海外のいわゆるインバウンド消費が非常に低い。こういった環境の中で、我々とすればそこをどうサポートしていくか、お年寄りや奥様方をどうサポートしていくか。キャッシュレス化を進めることで、売り上げが50%以上、1.5倍になると言われているが、実際に我々も、それを目指しておられる商店の方々にキャッシュレス化の意義を説いて回るというような、そういった活動を地道に進めている。
- キャッシュレス化が進まない理由は、やはり田舎になればなるほど高齢化が進んでいて、新しい技術への適応能力が低いところ。また、別に現金だけでも何ら困らないということ。是非、フィンテックを発信される企業の方には、どう解決していくのかというノウハウも添えて、我々にご提供いただくとさらに進んでいくと思う。外国人がよく言うのは、田舎の地方都市は、都会の都市部に比べると、クレジットも含めてキャッシュレスの決済環境が整っておらず非常に困ったという意見。まず決済環境を地元でどう増やすかを考えていきたい。
【マックスバリュ九州株式会社 社外取締役 林田 スマ 氏】
- 新聞を開くと、今、世界がキャッシュレスに向かって動いているということを毎日実感するが、読んでも読んでも片仮名や横文字の非常に難しい言葉が行き交っており、一つ一つスマホで調べないと分からない。
- キャッシュレスによって、スマートでスピーディーに支払いすることで時間の節約になったり、封筒やペンを使わずに財布の中身を管理出来たりとメリットは分かるが、決済する度に、色々な情報が流れて、何か非常に怖いことが起こるのではないかと不安に思ってしまう。
- 高齢者やIT弱者が、世代間格差を超えてキャッシュレスを理解するためには、もっと分かりやすい情報をもっと身近なところで発信していただくことが必要。