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「しんきん・しんくみの事業者支援推進セミナー」を開催しました(令和5年2月)

 東北財務局では、地域経済の活性化に向け、東北6県の信用金庫(以下「信金」という。)・信用組合(以下「信組」という。)の実務担当者を対象に、事業者支援のノウハウの共有を目的とした「しんきん・しんくみの事業者支援推進セミナー・地域の未来を見据えた事業者支援に向かって」を開催しました。

開催目的

 

  • 信金・信組においては、相互扶助の理念の下、中小・零細事業者の多様なニーズに応じた支援を通じて地域課題解決に貢献していくことが重要です。
     
  • 地域金融機関がそれぞれの地域で事業者に寄り添ったきめ細かな支援を進められるよう、金融庁・財務局としても、地域金融機関の事業者支援能力の向上を後押ししていくことが求められているところです。
     
  • 本セミナーは、事業者支援を組織的・継続的に実施している信金・信組の取組みや、関係機関から見た信金・信組に期待される役割などを共有することで、それぞれの信金・信組において自主的かつ創意工夫した取組みにつながることを期待して開催したものです。

開催概要

1.開催日時

 

令和5年2月7日(火曜日)13時30分から15時30分まで

2.開催方法

 

オンライン形式

3.参加者

 

東北6県の信金・信組の実務担当者等 102名

4.主催

 

東北財務局

開催結果

1.開催挨拶(東北財務局 田村理財部長)

 

 地域の事業者は、新型コロナウイルス感染症の長期化、資源価格等の高騰などにより、様々な経営課題に直面している。信金・信組の皆様には、事業者の資金繰りを支援するとともに本業支援も含めた経営改善、再生支援にも積極的に取り組むことが期待されている。

 本セミナーが有意義なものとなり、地域の事業者支援がより一層充実したものとなることを期待している。

2.事業者支援能力の向上に向けた取組みについて

 

 事業者支援態勢の整備状況、それに至った背景・経緯、事業者支援態勢の実効性を確保するための改善点や創意工夫点などについて、東北6県の信金・信組の中から、盛岡信用金庫及び石巻商工信用組合に発表をいただきました。

(1)発表概要(盛岡信用金庫)

  • よろず支援拠点との強い連携体制をとっており、全国の金融機関に先駆けて、平成26年度から合同相談会を開催。毎年度、開催方法や開催頻度を見直し、現在は毎月テーマを変えながら、年10回の開催を行っている。
     
  • 事業者支援を行っていく上での課題が3つある。1つは、営業店において、事業者の営む事業内容を正確に把握すること、1つは、本部において、支援メニューやツールを十分に把握・理解した上で、営業店が求める情報や協力要請に対応した営業店サポートを行うこと、1つは、人事異動により担当者が変更となった場合でも、継続的なハンズオン支援を行っていくこと、である。
     
  • 上記課題に対する取組みとして、従来は紙ベースで記録していた事業者情報をシステム上で営業店・本部が共有できるフォームを構築した。この取組みにより、本部において情報集約や分析を営業店とともに行うことで、迅速な営業店サポートができつつある。また、事業者に対するヒアリングシートを作成し、事業者の業況把握に努めている。ヒアリング結果は、主管部署で取りまとめる体制を取ることで、本部・営業店間での情報共有の徹底を図っている。更に、このヒアリングシートは、ヒアリング内容を統一することで、事業者の現況把握がまだ十分とは言えない職員に対する「育成ツール」としての意味合いを持たせてある。
     
  • 今後、当金庫ではタブレット型の新渉外支援システムを導入予定であり、その中で支援先・支援メニューをフローチャート式にし、顧客課題から最適なものを選択できるよう検討している。
     
  • 事業者支援は人材育成が重要であり、必要な業務知識・技能習得のため、資格取得を推奨するなど、自らの専門性を向上していく企業風土の構築に取り組んでいく。
     
  • また、本部組織体制の見直しにより、事業者の状況に応じた支援を2部署で分担することで、組織としての支援ノウハウ及び専門性を蓄積し、ハンズオン支援の強化を図っていく。

(2)発表概要(石巻商工信用組合)

  • 事業者支援態勢の背景・経緯であるが、協同組織の基本理念である「相互扶助」・「共存共栄」を実現するためには、お客様にしっかりと向き合い「困ったときのホームドクター」である伴走支援が重要な役割となっていることから、信組の特性を活かした共通価値を創造するために態勢を整備している。
     
  • 事業者支援を行うにあたっての当組合の課題と解決への取組みを4つ挙げる。1つ目は、営業店によって事業者支援への意識に濃淡が生じていたことが課題であったところ、取引先からの支援要望を待たずに営業店自ら年間の支援先を選定し専門家派遣を提案するような態勢にしたことで、営業店に自主性が生まれ、濃淡が改善されてきている。2つ目は、派遣した専門家と支援先とのミスマッチにより経営支援が進まないという課題があったため、事前に営業店長、本部、顧問の中小企業診断士の3者で支援先の特性・課題等について打ち合わせをして派遣する専門家を選定するようにしたことで、ミスマッチが改善されてきている。3つ目は、専門家派遣後のフォローアップが課題であったところ、支援後に営業店長と本部でフォローアップ検討会を開催し、今後の支援方針を明確にするほか、一定期間後に再度専門家派遣によるフォローアップ支援を行うことにより改善し、営業店のフォローアップに係る自主性にもつながっている。4つ目は、職員のスキルアップが課題であったところ、顧問の中小企業診断士による「個別経営相談」や専門家派遣の際に、担当職員を必ず同行させることにより、職員の傾聴力・現場力の向上につながっている。
     
  • その他、取組事例として、「中小企業119」の専門家派遣、自治体等の外部機関と連携した創業支援や、信組の特性を活かした事業者の元へ訪問可能な「個別経営相談」を実施している。また、取引先事業者の後継者教育を目的として平成28年度から実施している「後継者合同研修」は、取引先の後継者に担当職員が同伴参加し、およそ1年をかけて自社の経営計画を作り上げる全10回の研修であり、将来を担う後継者とコミュニケーションを深める効果も期待できるため、来年度以降も実施する方針である。
     
  • 事業者支援を行ってきた経験上、キーポイントは外部支援機関と連携しながら工夫と改善を繰り返し組織的・継続的に取り組むことである。
     
  • 当組合では、特別に高度な取組みを行っているわけではないが、今後も事業者に寄り添い、地域に貢献する金融機関であり続けたい。

3.しんきん・しんくみに期待される事業者支援について

説明概要(中小企業基盤整備機構東北本部)

  • 当機構は、中小企業の起業・創業期、成長期、成熟期といった各ステージに合わせた支援メニューを提供している。中小企業に対し、当機構が実施する無料経営相談においては、経営改善、売上拡大、新事業開拓等の相談が多い。中小企業向け支援施策の活用では、IT経営簡易診断や事業再構築支援の相談が多くなっている。
     
  • 東北においては事業承継が喫緊の課題となっており、信金・信組に対する期待は非常に大きい。当機構が専門家とともに支援している事例としては、信金が当事者意識を持ち経営者と一緒に悩みながら事業承継課題に取り組む事例のほか、地域振興支援事業を活用し、信金が地方の経済の将来を担う若手経営者等を対象に勉強会を実施している事例がある。
     
  • 引き続き、支援機関に対する講習会などの支援メニューを通じ、事業者支援能力向上を目指す信金・信組の皆様をサポートしていく。

4.意見交換・質疑応答

 

 金融機関・関係機関からの発表後に行われた意見交換・質疑応答では、他の金融機関への質問や、金融機関自らの事業者支援に関する取組み状況、課題などについて発言されるなど、活発な意見交換が行われました。

 

  • 当組合は、よろず支援拠点や事業承継・引継ぎ支援センター、中小企業活性化協議会等と連携した外部支援体制を整備している。また、各団体のセミナーを受講しており、職員の基礎知識はスキルアップしていると感じる。現在はコロナ対策特別融資先や飲食業の業況調査を実施し状況把握に努めているが、取引先の潜在的なニーズを発掘することが課題である。
     
  • 当金庫では、事業者に対するヒアリングシートを作成し、常に渉外担当が携行するとともに、融資担当もヒアリングを行えるよう窓口に備置きするなど、一度だけでなく、ヒアリングが必要な都度活用してニーズや課題、業況把握に努めている。
     
  • 当金庫では、約40社の外部機関と連携し、不動産の運用や事業承継、事業再構築、個人資産承継、人材採用等の課題解決に取り組んでいる。事業者支援における成功事例があれば伺いたい。
     
  • 進行中の事案をご紹介する。当金庫支援先の1つに海外に製造拠点を持つ学校関連商品の製造業者がある。同社は、少子化による影響が色濃く、主力商品の需要減少が見込まれている。支援策として、同社の強みである高い技術力・商品開発力を活かした他市場への参入を目指すべく、全国規模の組織とのビジネスマッチを実施した。現在、試作品の提供が完了し、先方も前向きに検討中である。また、製造拠点を海外に持つため、為替レートの変動リスクは常にあり、為替リスクを内包しても利幅を取れる体制への転換や、為替の影響を小さくする方法論などを検討している。このように、支援先にとって何が課題か、当金庫で何ができるか、経営陣も含めて個別具体的な提案を行っていきたい。
     
  • 中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)の事業承継に係る事例集に掲載されている事例を紹介したい。地元で人気のラーメン店の店主から後継者がいないと当組合の営業店が相談を受けた。相談を受けて直ちに事業承継・引継ぎ支援センターと連携し、地元で飲食店の創業を目指す方とのマッチングに成功した。条件として自分の味を受け継いでくれる人との希望があったため、同業他社よりも創業者の方が条件に合うと考え後継者を探した。最終合意までに2年を要したが、何より承継後も業況が良く、客離れせずに良かったと思う。
     
  • 当金庫の課題としては、把握した事業者の情報の質について、担当する職員でもばらつきがあるところ。具体的な研修・講習やアドバイス等で、情報の質が上がったような事例はあるか。
     
  • 現在、営業店の職員が作成した事業者に対するヒアリングシートを基に、営業店ごとのマンツーマンもしくは少人数単位での指導を行い、レベルアップを図っているところ。
     
  • 中小機構の研修を受講している。特に若手職員向けには、まずは傾聴すること、つまり、顧客に興味を持って話を聞き、対等に話ができるスキルの習得を目的としたものとしている。また、事業者のニーズや課題を把握するために作成した「経営ニーズアンケート」を活用し、若手職員でも経営者と話をする際に、情報を引き出しやすい形としている。
     
  • 当組合でも人材育成が課題であり、中小機構主催の財務分析講座のほか、年4回の集合研修会を実施している。
     
  • 当金庫では、中小機構主催の事業承継に係る研修(全4回)を年に1度、概ね10年目の職員が受講しているほか、外部講師によるTV会議を使った研修を半期に2、3度実施している。今後における研修受講者の選定は自主公募を多くすることとし、自発的に挑戦する人材を求めていく方針である。
     
  • 現場力が大切であり、当組合の顧問の中小企業診断士による経営相談や専門家派遣では、必ず職員を同席させている。若手の育成が課題であり、入組5年目くらいの職員を対象とした「育成塾」において、例えば新規開拓のためのロールプレイングを月に1度(全8回)、講師は支店長、人事課長を中心として実施している。来年度は営業リーダーを対象とした個人開拓のスキルアップ、目標管理、行動管理などの研修を検討している。

5.業界団体の事業者支援事業の紹介

説明概要(東北地区信用金庫協会)

  • 東北の27信金が連携力を発揮し、取引先企業を支援する新たな販路開拓等支援事業、東北しんきんビジネスクラブを令和4年4月に創設し、会員企業の商品・サービス内容等の情報を積極的に発信するWEBサイト「しんきん笑談.com」(しょうだんどっとこむ)を令和5年1月10日に開設した。
     
  • 今後は、各種商談会への出展支援、プレゼンテーション力・商品開発力等のスキル向上支援等を通じて、商談会等で成果を挙げることを目指し、取り組んでいく。

【セミナーの様子】

 

開会挨拶の様子

盛岡信用金庫による発表の様子

石巻商工信用組合による発表の様子

中小機構による説明の様子

東北地区信用金庫協会による説明の様子

参加者による意見交換・質疑応答の様子

 

 

6.閉会挨拶(東北財務局 向山金融監督官)

 

 地域の経済・社会は地域の事業者で成り立っており、個々の事業者に対する支援は、ひいては事業者が活動する地域課題の解決にもつながり、それは地域の事業者を会員・組合員とする信金・信組の皆様の持続的な発展にもつながることとなる。

 単独の金融機関では情報やノウハウなど対応が限られる面もあることから、地域金融機関同士、関係機関も含め横の連携を図っていただきたい。今回のセミナーをきっかけとして、それぞれの金融機関において、さらに自主的かつ創意工夫した取組みにつながれば幸いである。

本セミナーを振り返って

  東北財務局では、本セミナーの評価や、事業者支援能力の向上に係る信金・信組のニーズや要望などを把握するため、アンケートを実施したところ、参加者から様々な意見・要望が寄せられました。

 

(アンケートで寄せられた主な意見・要望)

  • 個別金融機関の発表では、当金庫が抱える課題と共通する内容が多く、その課題を克服するための取組みとその実務上の運用について参考になった。
  • 事業承継について、当金庫職員をはじめ事業者等においてもまだまだ関心が低いことから、事業承継支援に積極的に取り組んでいる機関から今回のような取組み事例の発表が聞きたい。
  • 事業再生、事業者支援全般についての情報提供や研修会を開催してほしい。
  • 人材育成が課題。売上・販路拡大に係る本業支援、創業支援などについてセミナー等を開催してほしい。

 

 東北財務局としては、信金・信組による事業者に寄り添ったきめ細かな支援が進展するよう、信金・信組のニーズや要望を踏まえ、今後も継続した取組みを実施してまいります。

 

本ページに関するお問い合わせ先

東北財務局 理財部 金融監督第二課
電話:022-263-1111(内線:3712・3096)

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