いわき信用組合に対する行政処分について
最終更新日:2025年5月29日
東北財務局は、本日、いわき信用組合(本店:福島県いわき市)に対し、協同組合による金融事業に関する法律(昭和24年法律第183号)第6条第1項において準用する銀行法(昭和56年法律第59号)第26条第1項の規定に基づき、下記のとおり業務改善命令を発出した。
記
業務改善命令の内容
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健全かつ適切な業務運営を確保し、組合員等の信頼を回復するため、以下の観点から、経営管理態勢・法令等遵守態勢等を確立・強化すること。
- 一連の不祥事件の発生、経営陣による長期に亘る隠蔽及び当局への事実と異なる報告に関する経営責任の明確化(責任追及を含む)
- 理事会及び監事による経営監視・牽制が適切に機能する経営管理態勢の確立(第三者により検証する態勢の整備を含む)
- 全組合的な法令等遵守態勢の確立(コンプライアンス意識が欠如した企業風土の改善を含む役職員の法令等遵守意識の醸成・徹底)
- 内部管理態勢の確立(融資管理態勢の確立、厳正な事務処理の徹底及び相互牽制態勢の確立)
- 内部監査態勢の改善・強化による監査機能の実効性の確保
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公的資金の活用に係る特定震災特例経営強化計画について上記1を踏まえて見直すこと。
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承諾を得ずに開設された口座の名義人などに対する丁寧な説明を行うこと。
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一連の不祥事件について、第三者委員会の調査報告書を踏まえつつ、更なる事実関係の精査及び真相究明を徹底して行うこと。
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上記1、3及び4に係る業務改善計画並びに上記2に係る見直し後の特定震災特例経営強化計画を令和7年6月30日(月曜日)までに提出し、直ちに実行すること(計画に修正があった場合は都度提出すること)。
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上記5の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3か月毎の進捗及び改善状況を翌月末までに報告すること(初回報告基準日を令和7年9月末とする)。
処分の理由
一連の不祥事件について、協同組合による金融事業に関する法律第6条第1項において準用する銀行法第24条第1項の規定に基づき求めた報告を検証したところ、経営管理態勢・法令等遵守態勢等について、以下のような重大な問題点が認められたため。
- 一連の不祥事件の発生、経営陣による長期に亘る隠蔽及び当局への事実と異なる報告
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前会長を始めとする旧経営陣が、業況不芳の大口与信先に大口信用供与等規制を逃れて信用供与を続け、ランクダウンを回避することを企図し、事業実態のない企業を通じた迂回融資や必ずしも名義人の承諾を得ずに開設した複数の口座を通じた融資(以下、「不正融資」という。)を実行した。
さらに、その発覚を免れるため、現役員を含め、秘密裏にこれらの融資の管理を行う役員を歴代引き継ぎ、自己査定抽出基準に抵触しないように不正融資実行金額を設定するなどして、長期間に亘り隠蔽を続けてきた。
- 元職員による多額の横領事件について、前会長を始めとする旧経営陣は、元職員への懲戒処分等を行わないまま通常どおり勤務させるなど不祥事件の発生を抑止するために必要な対応をとらず、その結果、元職員による更なる横領事件を招いた。さらに、前会長を始めとする旧経営陣は、横領による損失を不正融資等により補填し、こうした事実を長期に亘り隠蔽していた。
- 元職員による現金の横領事件について、前会長は支店長から不祥事件が発生した事実が本部に報告され、その事実を認識していたにも関わらず、当該事実を隠蔽していた。
- 当組合は、経営陣による長期に亘る不祥事件の隠蔽が発覚したことを深く反省し、第三者委員会を設置した上で厳正に対処するとしているものの、事実や法令等遵守よりも上意下達を絶対としてきた当組合の企業風土を背景に、前会長を始めとする旧経営陣及び一部の現理事が結託して、組合の現金の流用によって横領による損失を補填した事実を隠蔽し、意図的に当局に報告していなかったほか、実際には実施していない余罪調査を実施したものとして事実と異なる報告を当局に行った。
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- 経営管理態勢の不備
長期に亘り理事長・会長を務めてきた前会長が、理事の人選及び任命の専権を有しているなど、組合内で絶対的な存在となっていた。
このため、理事会は、経営に対する監督機能を発揮すべきところ、前会長に異議を唱えることが出来ていないほか、監事においても業務執行に関して警鐘を発しておらず、経営の監視や牽制機能が発揮されていないなど、およそガバナンスが機能していない。
- 法令等遵守態勢の不備
事実や法令等遵守よりも上意下達を絶対としてきた当組合の企業風土を背景に、事実と異なる余罪調査の状況を当局に報告するなど、コンプライアンス意識が組織全体で欠如している。
コンプライアンス委員会においても、事務的な報告が中心となっており、コンプライアンス意識を改善するなどといった議論が出来ていないほか、本来は組織全体の法令等遵守の模範となるべき経営陣がコンプライアンス意識を欠き、職員への啓蒙活動も不十分であるため、組織全体に遵法精神が根付いていない。
- 内部管理態勢の不備
支店長・融資担当者は、経営陣の指示を無批判に受け入れ、不正融資の実行に際して必要な印鑑証明書の添付を省略するなど、規程違反の事務処理を平然と行っている。
また、管理職ではない元職員単独による不正融資の実行に際しても、正規の手続きによらない融資実行であったにもかかわらず、検証者や管理職において、融資決裁から実行に至るいずれの過程においても不正を看過しているなど、内部牽制が形骸化している。
このように、厳正な事務処理の徹底に向けた相互牽制態勢が確立されていない。
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内部監査態勢の不備
監査部は、今回の不祥事件の手口となった融資事務に関して、監査の対象から除外しているほか、本来は抜き打ちで実施すべき扱いに反し、毎年、同時期に同店舗を監査しているがために、実態として予告に近い形となっているなど、監査機能が全く発揮されていない。
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