羽後信用金庫に対する行政処分について
最終更新日:2025年3月21日
東北財務局は、本日、羽後信用金庫(本店:秋田県由利本荘市)に対し、信用金庫法(昭和26年法律第238号)第89条第1項において準用する銀行法(昭和56年法律第59号)第26条第1項の規定に基づき、下記のとおり業務改善命令を発出した。
記
業務改善命令の内容
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「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(平成30年2月に金融庁が公表。以下、「ガイドライン」という。)で明記している対応が求められる事項のうち、対応未了となっている事項について、必要な措置を講じること。
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マネー・ローンダリング及びテロ資金供与(以下、「マネロン・テロ資金供与」という。)リスク管理態勢整備を早急に完了し、かつ態勢整備後においても実効性のある態勢を維持していく必要があることから、外部の知見・人材を活用することも含めて、人材配置等必要な措置を講じること。
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組織横断的な態勢を構築するために設置したコンプライアンス委員会において、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の実効性を確保するために必要な措置を講じること。
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今回の処分を踏まえた責任の所在の明確化を図るとともに、上記1から3を確実に実行し定着を図るために、経営陣による積極的な実態把握や必要な指示等の主導的な関与をはじめとするガバナンスを抜本的に強化すること。
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上記1に関しては可及的速やかに実行し、毎月末の実施状況を翌月1週間後までに提出すること(初回報告基準日を令和7年3月末とする。)。
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上記2から4に関する業務改善計画を令和7年4月21日(月曜日)までに提出し、直ちに実行すること。
なお、当該計画の実施完了までの間、3か月毎の進捗及び改善状況を翌月末までに報告すること(初回報告基準日を令和7年6月末とする。)。
処分の理由
当局検査の結果及び信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項の規定に基づき求めた報告を検証したところ、ガイドラインに基づく態勢整備を完了できておらず、その原因として、経営陣がマネロン・テロ資金供与リスクの重要性を認識していないことから、必要な人材育成・配置を行っていないことや、組織横断的な対応態勢を構築していないことなど、経営上の問題が認められた。
1.経営陣の消極的関与
マネロン・テロ資金供与対策は、国際的な要請の高まりや足元で特殊詐欺等の被害が拡大している状況を踏まえると、金融業界において最も重要な経営課題の一つと位置付けられるべきものである。このため、ガイドラインに基づくマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の整備については、金融庁及び当局から、令和3年4月に、令和6年3月末を期限として確実に実施するよう要請し、業界団体においても「マネロンガイドラインを踏まえた態勢整備のポイント(コンメンタール)」等を策定・展開するなど業界を挙げて取組を進めてきた。さらには業界団体と金融庁及び当局が官民一体で説明会を行い、金融機関の経営陣に対しても主導的な関与を求めてきた。
(期限までの対応未了・実態とかけ離れた当局への報告)
こうした中、当金庫においては、期限までに態勢整備を完了することができなかったことに加え、当局検査で確認したところ、当初の報告では対応済としていた項目についても対応未了となっていた項目が多数判明するなど、ガイドラインで対応が求められる事項の大半が対応未了となっている実態が認められた。
(期限超過後の実効性を欠いた改善策)
当金庫は、期限までに態勢整備を完了することができなかったことを受けて、信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項の規定に基づく報告徴求命令に対する改善対応策において「コンプライアンス委員会の開催」や「担当部署の増員」等を行う旨を当局に対して報告したものの、当局検査で確認したところ、3に記載のとおりいずれも実質的には機能しておらず、十分な改善に繋がっていない実態が認められた。
(検査指摘への不十分な対応)
さらに、当局検査において、実効性のあるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の早急な整備を行うよう指摘を受けたにもかかわらず、改善状況の報告では、対応計画が抽象的となっているほか、既に進捗遅延が生じているなど、依然として抜本的な改善策を講じているとは認められない。
このように、期限までに態勢整備を完了するよう金融庁、当局及び業界団体から再三にわたって周知があり、期限到来後においては態勢整備が未完了となったことについて経営管理態勢上の問題点等に係る報告を求められ、さらには、当局検査により実効性のあるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の早急な整備を行うよう指摘を受けるなど、自らのマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を構築する機会や態勢整備に係る経営姿勢を見直す機会が幾度となくあったにもかかわらず、経営陣は、マネロン・テロ資金供与リスク対策の重要性を理解せず、態勢整備に真摯に取り組んでこなかった。こうした経営陣の姿勢が、態勢整備に大幅な遅延をもたらしている真因と認められる。
2.ガイドライン対応の未完了
改善状況報告時点において、ガイドラインに基づく態勢整備完了に向けた必要な措置を講じておらず、態勢整備を完了していない。
3.組織横断的かつ十分な対応態勢の未構築
コンプライアンス委員会は、事務統括部や本部関係部(総務部、経営管理部、営業統括部、融資管理部)のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の整備に係る知識が不足していることから、対応が求められている事項の進捗報告にとどまり、改善に向けた議論を行う場として機能していない。
さらには、令和6年8月にはマネロン・テロ資金供与リスク管理担当部署である事務統括部を増員したとしているものの、十分な増員・体制であるか検証していないことに加えて、増員された1名も実態として他業務を抱えており、態勢整備に必要な人材育成・配置を行っていない。
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