地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー
最終更新日:2024年3月22日
神戸大学経済経営研究所 地域共創研究推進センター長 家森 信善
地域金融・中小企業金融を専門に、地域経済に必要とされる金融のあり方を研究されている、神戸大学経済経営研究所 家森 信善 地域共創研究推進センター長に、脱炭素に関する地域金融機関の重要性や期待すること等について伺いました。
企業の強み・弱みを理解している地域金融機関は企業の健康診断ができる絶好の存在
ー 脱炭素における地域金融機関の重要性について、お聞かせください。
脱炭素はこれから徐々に中小企業にも影響が及ぶことになります。しかし、中小企業は目先の課題に追われていることが多く、このことに気付いていない経営者も多くおられます。我々の身体で言えば、体調に問題がないと思っても定期的に健康診断を受けることで体調の変化に気付くことができますが、中小企業は経営のオーバーホールをする機会はなかなかありません。
では誰がその役割を果たすのか?それがまさに地域金融機関ではないかと思うのです。
専門的知識ではコンサルタント業者に勝てないかもしれません。しかし、取引先に寄り添い、息の長い伴走支援をできることが地域金融機関の大きな強みです。普段から取引先と接し、日頃からの事業性評価活動を通じて、強みや弱みを理解している地域金融機関だからこそ、取引先の力量に合わせた助言、視野の広い問題提起が可能になります。
有用な情報が組織的に蓄積されていることも強みです。先行事例の提供によるきっかけ作りや、相乗効果が期待できる事業者間のマッチング、取組の深化に向けた専門機関の紹介など、脱炭素を進めるうえで、地域金融機関が持つ情報やアイデアは大いに活用できるはずです。
このように、地域金融機関は、中小企業が脱炭素に取り組むにあたって、重要な役割を果たせる絶好の立場にいます。取引先の段階に応じて必要な助言・ノウハウを提供するといった活動を通じて、地域金融機関の事業性評価は、自己満足ではない実際の価値を提供することができるのではないかと思います。
小さくても構わないので、経営者が最初の一歩を踏み出す「きっかけ」を与えてほしい
ー 脱炭素の推進に向けて地域金融機関に期待することについて、お聞かせください。
中小企業に脱炭素の取組が進まない要因を尋ねると「社内に人材がいない、ノウハウが無い」という回答が多くなります。一方で、既に取り組んでいる事業者に聞くと、そういった回答は少ないです。考えてみれば、経験し、取り組んでいくうちに人が育ってノウハウができていくのです。
ですので、地域金融機関には、小さくても構わないので、経営者が最初の一歩を踏み出す「きっかけ」を与え、決断を後押ししてほしいです。できる範囲から少しずつ取り組んでもらい、社内で脱炭素を勉強してくれる人が出てくれば、少しハードルの高い取組を提案することもできるようになります。そうやって脱炭素の取組は進んでいくのではないかと思います。
中小企業の背中を後押しするプッシュ型の支援は、信頼関係がなければ押し売りや無理強いになってしまいます。だからこそ、取引先に寄り添い、息の長い伴走支援ができる地域金融機関に、脱炭素をチャンスとして活かすビジネスモデルを一緒に考えてほしいです。
脱炭素の取組は即効性があるわけではないので時間は掛かるかもしれませんが、長い目で事業者の取組を応援すること、それこそが地域金融機関の存在意義ですので、そこに期待したいと思います。
如何にぶれずに頑張れるか
ー 最後に、地域金融機関の経営トップに対するメッセージをお願いします。
当然ながら、地域金融機関が脱炭素のコンサルタント業に変わるわけにはいきません。ですが、この先、地域金融機関の本業である貸付審査を行ううえで、脱炭素というテーマは重要な要素の一つとして結びついてくる、そういう目線を持つことが大切です。
私の知る限り、経営トップの方々はとても素晴らしいビジョンを持たれていますので、あとは組織として掲げたビジョンを「如何にぶれずに頑張れるか」ということだと思います。既に皆さん、やろうと思っておられます。それをしっかり実現していくことが大事ではないでしょうか。
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