地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー
最終更新日:2024年3月22日
大阪商工信用金庫 理事長 多賀 隆一
次世代により良い自然環境を残したいという熱い想いを抱き、関係機関との連携や自金庫の取組強化等で脱炭素を推進されている、大阪商工信用金庫 多賀 隆一 理事長に、脱炭素に関する取組方針や支援策等について伺いました。
異常気象を子や孫の世代に残さない。「攻めの脱炭素」で付加価値を生み出す
ー 脱炭素の取組を行うことになったきっかけや取組方針についてお聞かせください。
今を生きる大人の責任として、子や孫の世代により良い自然環境を残したい。純粋にその想いから脱炭素に取り組んでいます。私個人としては、5年前に孫が生まれまして、小さな赤ん坊が夏に大変暑がる姿を見て、この異常気象を子や孫の世代に残してはならないと強く感じたことが、そもそものきっかけです。
また、そう思っている矢先に、菅首相(当時)が2020年10月の国会で「2050年カーボンニュートラル」を宣言されたことで、金融機関として脱炭素に積極的に取り組むことを決めました。
サプライチェーンから外されないための「守りの脱炭素」がまずは大事ですが、私はそれに加えて、取引先メーカーに対し、脱炭素に貢献する製品はその付加価値を製品価格に転嫁するべきで、より良いものをより高く(適正価格で)提供しませんか、とお伝えしています。
脱炭素に取り組むことで儲かるんだという「攻めの脱炭素」を浸透させていきたいと考えています。このような考えから、当金庫では「脱炭素サポートローン」を創設するなど、脱炭素に取り組む事業者を対象とした融資商品を提供しています。
自ら率先して、取引先に脱炭素に取り組むよう推奨
ー 現在注力している、取引先や地域に対する脱炭素支援策についてお聞かせください。
2021年11月に三井住友海上火災保険と提携し、当金庫の取引先は同社が実施するCO₂排出量の算定サービスを無料で受けることができるようになりました。近年は積極的に脱炭素に取り組む取引先が増えてきており、CO₂排出量の算定を実施している例も多く見受けられます。
他にも、2023年4月、当金庫は大阪府が推進する「脱炭素経営宣言登録制度」に第1号として登録しました。現在、3,500社を超える事業者がこの制度に登録していますが、そのうちの400社程度は当金庫からお声掛けをして登録に至った方です。
この制度に登録すると、大阪府の補助金申請などにおいてメリットがあるため、当金庫では、支店の若手営業職員が積極的に取引先にお勧めしています。
ただし、職員に「やらされ感」があると意味がないのでノルマを課しておりません。当金庫の利益に直結しなくとも、職員のそうした動きが世の中の価値創造に役立つということを、きちんと可視化して評価していきたいと思っています。
また、私自身も取引先に伺う時は、必ず脱炭素に取り組みましょうとお伝えしています。若い人ほど関心を示してくれる傾向にあるので、親子で事業を営んでいる先には、後継者の方にも同席してもらうようお願いしています。どんな業種でも脱炭素に取り組むことはできるので、先んじて取り組み、それを上手く差別化できれば価格への転嫁も可能になると考えています。
取引先の脱炭素経営を支える
ー 職員の皆様に対して、期待を込めたメッセージをお願いします。
当金庫は「やさしくて強い信用金庫」を目指して、社会貢献と利益の両立を実現することを掲げています。地域に根差した信用金庫として、個人や企業、地域社会に優しくなくてはなりません。個人や企業に優しくなければ、信用金庫としての存在価値はありません。一方で、優しくあるためには、当金庫自身が強くなければならないと思っています。
現在、多くの取引先と提携して、脱炭素を含む経営課題の解決に向け取り組んでいますが、これらを支えるのは職員の実行力であり、これからも職員一人一人がお客様や地域社会に貢献するにはどうしたら良いのかを考え行動してくれることを期待しています。
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